鎌倉・小町通りにある和菓子店「ともや」が手がける「幸せをよぶ大仏さま焼き」が、観光客減少の逆境を乗り越え、1日1000個を売り上げるヒット商品となった。大仏の顔をかたどった焼き菓子は、健康運、人気運、金運、美人運、仕事運、恋愛運の6種類の開運フレーバーが特徴で、繁忙時には連日完売が続く。
二代目夫婦が引き継いだ小さな和菓子店の悩み
「ともや」は1981年創業の老舗で、先代の時代は酒饅頭や団子、わらび餅などを販売し地域に親しまれてきた。しかし、時代の変化とともに客層やニーズが変わり、売り上げは伸び悩んでいた。転機は二代目・南祐介さんが店に入った頃に訪れる。妻の亜実さんは「当時は人手不足もあり、売り上げも決して順調とは言えませんでした」と振り返る。祐介さんは和菓子屋に生まれ育ったが、家業を継ぐまでは逗子の飲食店で働いていた。家業を継ぐのは自然な流れだったという。
大仏さまのほほ笑みはこうして生まれた
大仏さま焼きのアイデアは、亜実さんが提案した。鎌倉の観光土産として、大仏をモチーフにした焼き菓子はないかと考えたのが始まりだ。祐介さんは「最初は半信半疑だった」と語るが、試作を重ね、ほほ笑む大仏の表情を再現するのに苦労した。型を何度も修正し、焼き加減や生地の配合を調整して、現在の愛らしい形が完成した。
ヒットのカギは開運フレーバー
商品の差別化として、亜実さんは「開運」というコンセプトを提案。6種類のフレーバーはそれぞれ運気に対応し、金運はゴールドのパッケージ、恋愛運はピンクなど、見た目と味で楽しめる。この仕掛けが観光客の間で話題を呼び、SNSで拡散された。特に若い女性客に人気で、「どれにしようか迷う」という声が店先で聞かれる。
発売直後、コロナ禍で人が消えた
大仏さま焼きが発売されたのは2020年。しかし、直後に新型コロナウイルスの感染拡大により鎌倉から観光客が消えた。亜実さんは「発売したばかりなのに、お客様が来ない。諦めかけたこともありました」と当時を振り返る。しかし、SNSでの口コミが徐々に広がり、地元メディアにも取り上げられるようになった。コロナ禍が落ち着き始めた2021年以降、売り上げは急増。現在では1日1000個を販売する日もある。
見た目だけじゃない味へのこだわり
ヒットの背景には、味への妥協のない姿勢がある。祐介さんは「見た目だけでなく、食べておいしいと思ってもらわないとリピートしてもらえない」と語る。生地は北海道産の小麦粉と国産の砂糖を使用し、餡は小豆から手作りする。フレーバーごとに異なる素材を組み合わせ、試行錯誤を重ねた。例えば、金運のフレーバーには柚子と蜂蜜を合わせ、恋愛運には苺とチョコレートを使うなど、細部にまでこだわっている。
「幸せをよぶ」の先にあるもの
大仏さま焼きの成功は、二代目夫婦の協力関係があってこそだ。祐介さんは伝統の味を守り、亜実さんは新しいアイデアで店に風を吹き込む。亜実さんは「お客様が笑顔になる商品を作り続けたい」と話す。今後は季節限定フレーバーや、鎌倉以外の販路拡大も検討しているという。大仏さま焼きは、単なる土産物ではなく、訪れる人に幸せを届ける存在として、これからも進化を続ける。



