「餃子の街」と聞いて思い浮かべるのは宇都宮や浜松かもしれないが、福島市も隠れた餃子の街である。名物は20~30個の餃子が皿を埋め尽くす「円盤餃子」。餃子を丸く並べ、中央までぎっしり詰めて焼き上げる豪快なスタイルだ。
今回はその味を確かめるため、元祖とされる人気店へ向かった。
福島駅東口から「中央通り」へ、細い路地の名店「元祖円盤餃子 満腹」
訪れたのは福島駅から徒歩15分ほどの「元祖円盤餃子 満腹」(以下:満腹)。1953年創業で、福島市に円盤餃子を広めた名店である。店は細い路地の奥にあり、初めて訪れる人は見つけにくいかもしれない。スマホの地図を頼りに、福島稲荷神社近くの交差点から路地へ入ると、昔ながらの店構えが現れた。
満腹は福島市で最初に円盤餃子を考案・販売した店。初代店主のかつゑさんがかつて暮らした満州(現在の中国東北地方)で覚えたレシピがルーツだ。創業から70年以上が過ぎた現在も、かつゑさんの味と製法を受け継ぎ、皮も餡もすべて手作り。多い日は3,000個の餃子を包むという。
昼営業は土日と祝日のみで、平日は夕方からの営業。営業時間内に餃子が完売したらその時点で閉店となる。筆者が訪れたのは売り切れる直前で、滑り込みで最後の客になった。
メニューは焼き餃子と水餃子のみ、円盤餃子は1皿30個
メニューを見ると、主役は焼き餃子と水餃子。麺類もライスもなく、餃子一本で勝負する潔さだ。中でも円盤餃子は1皿30個。一瞬ひるんだが、ここまで来たら餃子を制覇しなくてはと、円盤餃子に加えて水餃子も注文した。
かつゑさんが餃子を覚えた満州では水餃子が最もポピュラーな食べ方で、焼き餃子は余った水餃子を焼き直して楽しむ料理だったという。その後、福島市へ戻ったかつゑさんは餃子を焼いて提供。それが評判を呼び、現在の円盤餃子文化が広がるきっかけになったとされる。
そんな歴史に思いを巡らせていると、お目当ての品が運ばれてきた。
見た目はずっしり、食べればあっさりの円盤餃子
ぐるりと美しく並べられた餃子はまさに円盤で、予想以上の迫力がある。餃子は円形に25個、中央に5個の計30個。集合体だとずっしりと重そうに見えるが、食べて驚いたのはその軽さ。白菜の甘みがふわっと広がり、焼き目はパリッと香ばしい。薄い皮をかじると、やわらかな餡がほろりとほどける。
一方の水餃子はいたってシンプルで、使っている餃子は円盤餃子と同じだという。つるんとした皮が口の中でほどけるようなやわらかさで、シャキシャキとした野菜の食感が際立ち、焼き餃子とはまったく違うおいしさが楽しめる。
もともとは同じ餃子なのに、ここまで食感や味わいが変わるとは驚き。夢中で食べ進め、気付けば水餃子を完食。円盤餃子もあと半分。30個という数に身構えていたのが嘘のように、箸は止まらず、脂っこさを感じず最後まで飽きずに食べられる軽さも魅力。この味が福島市に広まり、餃子文化として根付いたのも納得だった。
満腹の餃子のおいしさの秘密は、餡にたっぷり使われた白菜。春から秋は各地から取り寄せ、冬は旬の福島県産白菜を使っているという。
そしてついに円盤餃子も完食。ごちそうさまでした。30個という数に身構えていたが、最後まで食べ飽きず、箸が止まることはなかった。店名の「満腹」はまさにこの一皿を表していると納得した。
お会計を済ませて店を出る際、店内にはたくさんの縁起物があり、「春夏冬二升五合」は「商い(秋無い)ますます繁盛(五合=半升)」と読むそうで、長年愛され続けてきた店の歴史を感じさせる。
福島市の餃子文化はこの一皿から始まった。円盤いっぱいに並んだ30個の餃子は見た目こそ圧巻だが、野菜たっぷりで驚くほど軽く、気付けば一人でもぺろり。焼き餃子と水餃子、それぞれ異なる食感を味わえるのも魅力だ。福島市を訪れたら、餃子文化発祥の味をぜひ体験してほしい。



