イラストレーターの田村セツコさん(88)は現在、黒猫のにゃん太(オス、推定8歳)と暮らしている。にゃん太がいるおかげで、88歳の今も楽しく一人暮らしができているという。元々は「にゃん太郎」という名前だが、少し長いので「にゃん太」と呼んでいる。
田村さんは昔から猫が好きだったわけではなく、口を開けたらキバが見える猫を見て怖いと思ったこともあった。しかし、30歳のときに転機が訪れた。
30歳で初めての猫との出会い
30歳のとき、実家を離れてアパートで一人暮らしを始めた頃、あるカフェを訪れると、カウンターのレジで革のジャンパーの懐に小さな黒猫を抱いた男性が店の人と話していた。「どこまでもこの猫がついてくるから弱っちゃった。でもうちは猫を飼っちゃいけないアパートなんだ」という言葉を聞き、直感的に「私にください」と言った。
とても小さな猫だったため「チビ」と名付けた。これが1匹目の猫との出会いだった。チビをエプロンの胸ポケットに入れて買い物に行くと、道行く人から「ぬいぐるみみたい」「あくびをする姿がかわいい」と声をかけられ、大人気だった。当時は家と外を自由に出入りさせていたので、近所の人が「猫ちゃんを公園で見かけましたよ」と声をかけてくれるなど交流ができて楽しかった。迷子になったときに備えて電話番号を書いた赤いリボンを付けていたため、あちこちから電話がかかってきて大変だったこともあった。
知り合いが猫を巡り合わせる不思議な人生
わけもわからず飼い始めたが、あまりのかわいさに猫が大好きになった。その後も、20年くらい生きたキジ猫の「桃代」や、小説「長くつ下のピッピ」の登場人物から名前を取った「ニルソンさん」など、たくさんの猫と暮らしてきた。ペットショップから迎えた猫は一匹もおらず、先代の猫がいなくなると知り合いが新たな猫と巡り合わせてくれる不思議な人生を送ってきた。
しかし、片方の目が白かった黒猫の「ぴーちゃん」を最後に、その流れが途絶えた。「私が先に死んでしまったら猫はどうするんだろう」と思い、猫を飼うのをやめようとした。何年たったかわからないほどの時間が過ぎた頃、にゃん太との出会いがあった。
にゃん太との出会いと現在の暮らし
2023年の年末、連載をしている月刊紙の担当編集者の女性から「外国へ旅行に行くから猫を預かってほしい」と言われた。方々で断られたそうで、田村さんが断ったら大変なことになると思い、お預かりしたのがにゃん太だった。その後、女性の家庭の事情もあって、そのまま田村さんの家の猫になった。今も女性と交流は続いていて、にゃん太の様子をたびたび見に来てくれる。
にゃん太は田村さんに様々な喜びを与えている。今では双方にとって幸せだと思っているという。にゃん太はたくましく、賢く、かわいい猫で、思わずくすっと笑えるチャンスをいっぱいもらえる。「黒猫は幸せを運んでくる」という言い伝えは当たっているのではないかと思うと語った。



