西村由紀江、デビュー40周年記念アルバム「ALL TIME BEST」に込めた思いと音楽人生
西村由紀江、デビュー40周年アルバムに込めた一音の力

作曲家でピアニストの西村由紀江さんが、デビュー40周年を記念したアルバム「ALL TIME BEST」を発表した。過去40枚のアルバムから1曲ずつをセレクトし、新曲2曲を加えた、アーティスト人生の集大成ともいえる一枚だ。

デビュー当時は「地味」「退屈」と言われた

デビューは昭和61年。バブル景気に沸き、軽快なテクノポップスが興隆する時代だった。ヒーリング音楽の先駆けとなった自身のピアノ曲は「地味」「退屈」と言われる不安の中でのスタートだったという。西村さんは「人と出会い経験を積み重ねる中で、少しずつ解き放たれていった」と振り返る。

アルバムには、孤独や戸惑いを感じさせるメロディーから、次第に前向きになり、ラストは明るい未来を予感させるように高音の余韻が響く構成となっている。新曲「Energy」は、40年の音楽人生を表現した。

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日記代わりの作曲と「とまどい」に込めた葛藤

西村さんは幼い頃から、自分の気持ちを日記に書くようにメロディーをつづってきた。言葉で表現するのが苦手で、「周囲とうまくコミュニケーションが取れなくて。友達も少なくて、不登校気味でした」と打ち明ける。喜び、悲しみ、悔しさ、怒りなど、心が動くときに頭の中に鳴るフレーズを書き留め、一つの曲として作り上げていく手法は、今でも変わらないという。

小学生のときから音楽界で注目され、桐朋学園大に入学すると同時にデビュー。しかし、当時の社会ではあまり歓迎されず、「もっとポップなサウンドにしたほうがいい」と何度も言われた。今回のアルバムに収録された「とまどい」には、デビュー2年目の不安と葛藤が込められている。

震災を機に気づいた「一音の力」

道標になったのは、作品を聴いてくれた人からの言葉だった。「この曲を聴くと眠れる」「生きようと思えた」。ある頃からヒーリング音楽と称され、広く受け入れられるようになった。「私は何も変わっていない。時代が変わっていったんです」と語る。

東日本大震災の後、ピアノを失った家庭に自らピアノを届ける取り組みを始めた。弾き初めに音を鳴らした瞬間、大粒の涙をこぼす被災者の姿に、「いい曲かどうかの前に、ピアノには一音で人の心を解きほぐす力があるんだ」と改めて気づいた。たった一音でも、聴く人に思いを届けられる音楽が目標になった。

若い頃の音は純粋でみずみずしいが、「年齢と経験を重ねたから出せる熟成された音色がある」。今の自分が出せる音色をとても気に入っているという。理想の音を食べ物に例えるなら「お吸い物」。一見すると透明だが、「滋味深くて、だしをとるのに手間と時間がかかっているでしょ。そういう音を、これからも追求していきたい」と話している。

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