「世界一の映画館」酒田大火50年、思い出募集 淀川長治も絶賛したグリーンハウス
「世界一の映画館」酒田大火50年、思い出募集

山形県酒田市の中心市街地を焼き尽くした「酒田大火」から、2026年で50年となる。火元となり焼失した映画館「グリーンハウス」は、豪華な内装から「世界一」と称され、映画評論家の淀川長治も絶賛した伝説の存在だ。半世紀の節目に、ファンたちが全国から「思い出」を募り、後世に記録を残そうとしている。

酒蔵から生まれた「世界一」の映画館

酒田市などによると、グリーンハウスの元は明治末期に建てられた酒蔵だった。その後ダンスホールを経て、1949年に洋画専門の映画館として開館。大型スクリーンと少人数用個室を備え、館内の至る所に生花が飾られていた。回転扉やショーケースといった豪華な内装に加え、上映開始を知らせるブザーの代わりにジャズの名曲を流す演出も来館者を魅了した。

映画評論家の淀川長治は、自身が編集者を務めた映画情報誌や週刊誌のインタビューでグリーンハウスをたびたび絶賛。「あれは、おそらく世界一の映画館ですよ」「これをそっくり銀座の真ん中に運びたい」と語ったという。

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大火で焼失、街から映画館が消える

しかし1976年10月29日夕方、グリーンハウスから出火。強風で炎は瞬く間に燃え広がり、市中心部の約4分の1を焼いた。電気系統のトラブルが原因とされている。大火では死者1人、重軽傷者1003人を出し、住宅など1774棟が焼失。被害総額は約405億円に上った。

当時の経営者が兄弟だったことからグリーンハウスの姉妹館と呼ばれた「港座」は、火災を免れたものの、隣町にできたシネコンの台頭に抗えず2002年に閉館。市内から映画館は消えた。

50年目の節目に動き出すファンたち

港座の現在のオーナー、阿部剛さん(65)は「回転扉を開くと、違う世界に入っていくワクワク感があった」と当時を振り返る。阿部さんら地元の映画ファンは大火50年の節目に、グリーンハウスにまつわるエピソードの募集を企画。「みんなの思い出を捉え直し、後世に伝えるきっかけになれば」と願う。

酒田市出身で東京在住の漫画家、カネコアツシさん(59)は「歴史を感じる建物で、通った日々が今につながっている」と語る。同市広野の小学校講師、渡部明子さん(65)は「大火の日は空まで真っ赤になっていた」「大人になったら行こうと思っていた憧れの場所だった」と惜しむ。

ドキュメンタリー映画も公開、記憶を未来へ

グリーンハウスを巡っては2019年、ファンや元従業員らの証言を集めたドキュメンタリー映画「世界一と言われた映画館」が全国上映された。集まった思い出は、当時の映画ポスターや調度品とともに港座で展示し、映像にすることも検討する。阿部さんは「思い出話を集約したような映画館を復活できれば」と構想を抱く。

思い出話の送り先は、山形県酒田市日吉町1の6の9港座アートヴィレッジ「映画館物語」係。グリーンハウス以外のエピソードも歓迎している。

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