50代以降では男性よりも「仕事での成長意欲」が強い…データで分かった「定年前後の女性」をめぐる残念な現実
書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介する。今回取り上げるのは坊美生子『女性たちの定年後』(祥伝社新書)である。
イントロダクション
定年後には退職、雇用延長、再就職(転職)など複数の選択肢があり、いずれの場合も「人生の一大イベント」と捉えられやすい。だが働く女性の場合、結婚・出産、家族の病気などでライフステージの変化が起こりやすく、すでに様々なキャリアの分岐点を経てきた。そんな女性たちは定年後をどのように迎えているのか。
本書では、ニッセイ基礎研究所で中高年女性のライフデザインを研究してきた著者が、豊富なデータを分析し「働くミドルシニア女性」の定年前後の特徴を描出。さらに様々なライフステージを歩み働き続けるミドルシニア女性11人にインタビューし、一様ではない「女性たちの定年後」の実像を伝えている。
現在、60代前半では7割、60代後半では4割の女性が就労しているという。男女の違いで言えば、女性の方が、定年後にこれまで勤めていたのとは違う職場に転職する割合が高いようだ。
著者はニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任。日本のジェンダーギャップ解消と女性の自立を目的として、中高年女性の雇用関連の調査研究に力を入れている。
「男女雇用機会均等法」施行から40年
2026年は、募集・採用、配置・昇進などで男女の均等な取り扱いを定めた「男女雇用機会均等法」施行から丸40年である(当初は努力義務)。施行当時に採用された「均等法第一世代」は、その多くが結婚・出産などを機に退職したが、紆余曲折を経て働き続けてきた女性たちが、近年続々と定年を迎えている。
定年後の仕事はよく「セカンドキャリア」と言われるが、女性の場合は、結婚・出産、夫の転勤の帯同、介護などで、離職経験のある人が男性よりも多く、そもそも定年後の仕事が2番目ではなく、3番目や4番目という人もいる。多くの女性は、定年前にもライフステージの変化を経験している。
女性の定年は、男性と何が違うのでしょうか。定年前後の仕事や働き方の変化等について、公益財団法人21世紀職業財団の「女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査――男女比較の観点から――」(2019年)をベースに分析していく。
50代以降は女性の方が成長重視
調査によると、50代以降の女性は男性よりも「仕事での成長意欲」が強いことが明らかになった。具体的には、50~64歳の女性正社員のうち「成長を実感できる仕事をしたい」と回答した割合は男性を上回っている。一方で、男性は「安定した仕事」を重視する傾向が強い。
しかし、現実は厳しい。多くのミドルシニア女性が「ずっと平社員」のままである。昇進機会の少なさや、職務経験の乏しさが原因と考えられる。特に、結婚や出産でキャリアが中断された女性は、十分な経験を積めないまま定年を迎えるケースが多い。
「限界認知」に至る経験が少ない
さらに、女性は「限界認知」に至る経験が男性より少ないという。限界認知とは、自分の能力の限界を認識し、それを乗り越えるプロセスを指す。男性は職場での競争や挑戦を通じてこの経験を得やすいが、女性はそうした機会に恵まれないことが多い。
こうした背景には、職場におけるジェンダーバイアスや、女性に与えられる仕事の範囲が限定的であることが影響している。
大手アパレルから社会福祉法人へ転職
本書では、11人のミドルシニア女性へのインタビューが紹介されている。その一人、Aさん(50代)は大手アパレル企業で長年勤めた後、社会福祉法人に転職した。以前の職場では売上ノルマに追われる毎日だったが、現在は利用者との関わりにやりがいを感じているという。
「以前よりも仕事に意義を感じている」と語るAさん。給与は減少したが、精神的な充実度は高い。このように、定年後にキャリアチェンジを果たす女性は少なくない。
「役割」と「期待する成果」を伝える
著者は、企業に対してミドルシニア女性の活躍を促進するためには、明確な「役割」と「期待する成果」を伝えることが重要だと指摘する。漠然とした指示ではなく、具体的な目標を示すことで、女性の成長意欲を引き出せるという。
また、女性自身も、定年後を見据えて計画的にスキルアップを図る必要性がある。特に、デジタルスキルやマネジメント経験を積むことが、キャリアの選択肢を広げる鍵となる。
定年後を自分でデザインするためには、早い段階からの準備が不可欠だ。本書は、働く女性に多くの示唆を与える一冊である。



