旅する料理人・蒲原ゆばこさん、京都拠点に国内外で旬を追う
旅する料理人・蒲原ゆばこさん、京都拠点に国内外で旬を追う

場所を問わず働く「ノマドワーカー」や移動しながら生活する「アドレスホッパー」といった働き方を実践する女性がいる。出張料理人として活動する蒲原ゆばこ(本名・尚子)さんは、京都のシェアハウスを拠点に、月の半分以上を国内外の移動先で過ごしながら日本料理を提供している。

料理人を志したきっかけ

蒲原さんは17歳で2型糖尿病を発症。医師からは飲食の仕事は避けた方が良いと言われたが、「やってやろう」と決意した。栄養士の専門学校に進み、調理師の資格を取得。19歳で上京し、社員食堂や百貨店での勤務を経て、銀座の日本料理店で約7年間板長を務めた。40歳で退職後、単身でニューヨークに渡った。

移動生活の始まりと広がり

銀座で毎日食材に触れる中で、魚が取れる場所や旬の時期が変わっていると感じた蒲原さんは、「料理人として地球環境に対してできることはないか」と考え、自ら食材のある場所へ向かうスタイルを模索した。ニューヨークでは約2か月間で50軒以上の店を訪問。郊外の農場と牧場が一体となったレストラン「ブルーヒル」で、農家とシェフが一緒に食材や飼育方法を説明し、その場で採れたものを食べる体験に感動し、「日本でこれをやりたい」と思った。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

仕事を探すために旅をするのではなく、行った先で仕事が生まれてきたという。ニューヨークの料理人の紹介でメキシコ、スペイン、イタリアへ渡り、スペイン滞在中には大阪・関西万博のイタリア館で提供するジェラート開発の話を紹介された。万博会場では開幕から2か月間、ジェラート作りから列の誘導まで携わった。

日本での活動と今後の展望

店舗を持たないスタイルで身軽に動けることを活かし、飲食店の開業支援やイベントに呼ばれることが多い。個人では昨年10月に岐阜県多治見市で初の「Farm to Restaurant」を開催。ドレスコードは長靴で、畑にテーブルを置き、農作業や農家の話を聞いた後、現地の食材を使った料理を提供した。今年は5月に兵庫県丹波篠山市で田植え、7月に北海道羅臼町で昆布漁体験も行った。蒲原さんは「日本の魅力は地方にある。旬に合わせた予定を組み立て、シェフと生産者のタッグで一次産業を盛り上げたい」と語る。

移動生活を通じて、生産者と接することで生きる力を感じ、食材が手元に届くまでの過程を自ら体験することで「当たり前が当たり前ではない」と気づいたという。銀座時代はその日来る客の顔を思い浮かべて仕込みをしていたが、今は扱う食材の生産者の顔が浮かぶようになった。不安がないわけではないが、「好奇心が先に立ち、『やらない後悔』の方が嫌だ」と話し、仕事の別れ際には「地球のどこかで会いましょう」と伝えている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ