取り壊し決まった校舎からの遺言「空を見上げて前を向いて」…辛酸なめ子<59>
取り壊し決まった校舎からの遺言「空を見上げて前を向いて」

女子校の世界とお別れする前に、長い年月を生徒と共に過ごしてきた校舎に人格が宿っているようなイベントが3月に開催された。「藤村女子中学・高等学校 ありがとう・さようならセレモニー」である。

藤村女子は吉祥寺に90年以上の歴史を持つ女子校。2027年に校舎を改築し、共学化および校名変更、吉祥寺湧水中学校・高等学校として生まれ変わる。女子校好きとしては寂しいが、旧校舎にお別れを告げるイベントに伺った。

校舎からの問いかけ

学校の門の前では生徒が歩行者を呼び込み、誰でも入れるオープンな催し。OGや在校生も多く集まった。午前中は第一体育館で「校舎に贈るセレモニー」も開催された。校舎はいくつかの建物に分かれ、近隣の店が菓子やパンを販売するコーナーもあった。「西館」では「わたしはなぜ壊されるのか」展を開催。リーフレットには「1973年に完成した西館は約50年間、多くの生徒たちの学びと日常を見守ってきました。しかし学校は新しい時代の学びに応えるため校舎を建て替えることを決断しました。西館はこの3月末でその役目を終えます。本展示は西館から来場者へ問いを投げかける展示です」と書かれていた。

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西館からの「わたしは、なぜ壊されるのか」「わたしの役目とは、何だったのだろう」という思いも綴られ、「わたしは悲劇のヒロインでいたくない」という言葉にプライドを感じた。

クリエイティビティが爆発する教室

西館の3階に上がると、高3の教室が並び、廊下の壁には大量の生徒たちの手形が。カラフルでPOPな手形の下には仲良しグループの名前や先生への想いが書かれ、愛校心が感じられる。教室に入ると、壁や床にガーリーでポップ、時に狂気を感じるインパクトの強い絵が描かれ、生徒のクリエイティビティが爆発していた。校舎も喜んでいるようだった。

廊下や教室の机には白い文字で校舎からの問いかけやメッセージが書かれていた。「あの頃、あなたは何に迷っていましたか」「母校のお気に入りの場所はどこでしたか」「放課後、駅までの道のりは長かったですか」「どんな話をしながら帰りましたか」「何も言わず隣にいてくれた人はいましたか」「席替えの日は少しドキドキしましたか」「教室の匂いはどんな匂いでしたか」など。この学校の生徒でなくても記憶を呼び起こして答えたくなる。企画や文章を考えた先生や生徒のセンスに脱帽だ。

校舎からのメッセージ

踊り場の壁には黒い太字で校舎のメッセージが綴られていた。「次の100年、この学校がこの街に在り続けるために、形を変えるという道を選びました」。真剣に考え、校名変更や改築を決断したので、壊される校舎も納得しているだろう。生徒たちの愛あるメッセージが階段の壁を埋め尽くし、「楽しい青春をありがとう」「校舎さん、お疲れ様でした!」「娘たちをありがとう」「FUJIMURA大好き」「藤っこサイコー」「ママの母校。楽しい!! ありがとう」「藤村6年間最高でした」「I LOVE 藤村」「1時間30分かけて通い苦しかったのも今は良い思い出」「宝物の思い出をありがとう」など。学校生活は悲喜こもごもあったと思うが、最後に出てくるのはポジティブな思いや感謝。校風や教育方針の影響だろうか。

「おばあちゃん大好き」「おばあちゃんLOVE」というメッセージもあり、創立者の藤村トヨ氏のことと思われる。創立者をおばあちゃんと呼べる自由な雰囲気の女子校のようだ。

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踊り場に「わたしの最期の姿に、あなたは何を見出しますか」と校舎からの問いかけ。この校舎は形はなくなっても、皆の心の中で生き続けるだろう。「学校とは、何なのか。それでも学校は続きます。次の時代へ」という校舎の言葉は、運命を受け入れ前向きに捉えている。式年遷宮のように新しくなった校舎に、また学びの神が宿るだろう。

屋上は来場者が自由にペイントできるようになっていた。学校の屋上は青春の象徴で、部外者なのに高校生にタイムスリップした感覚。50年間生徒と共に過ごし、生徒を見守り続けた校舎が最後に見せたかった景色は、屋上からの青い空だったのかもしれない。これからどんなことがあっても、空を見上げて前を向いてほしい、そんな校舎からの遺言を部外者ながらしっかり受け取った。