松たか子主演「ナギダイアリー」二組のカップルの揺れる心を描く
松たか子「ナギダイアリー」二組のカップルの心の揺れ

映画「ナギダイアリー」は、自然に恵まれた素朴な町「ナギ」を舞台に、二組のカップルの揺れる心を見つめる作品だ。主人公は、山の木を素材に作品を作る彫刻家の寄子(松たか子)。一人で暮らす彼女の家を、東京や台湾で活躍する建築家の友梨(石橋静河)が訪ねる。友梨は寄子の弟と結婚したが、離婚している。

彫刻家と建築家、対照的な仕事

彫刻は美術館でも道ばたでも、好きな所に置いて誰にでも見てもらえる無目的で自由な仕事。一方、建築物は誰かのために作られるのが基本で、目的がはっきりしていて不自由だ。仕事や生活に疲れた友梨は寄子に引かれていき、寄子は弟の元妻を自然に受け入れられる。

静かな町で生まれる新たな関係

寄子には好きだった女性に振られた過去がある。幼なじみの好浩(松山ケンイチ)は友梨に好意を抱いているらしく、2人の女性の関係にさざ波が立つ。喧騒の中では淡々と話す彼女たちの言葉はかき消されてしまうだろうが、穏やかなナギという町では感情の機微を見過ごさないでいられる。

もう一組のカップルも生まれつつある。好浩の息子で中学生の春樹(川口和空)は、親友の圭太(藤原聖)から「好きだ」と告白され、2人は一緒に町を出ようとする。ナギという町は、新しい関係を育む契機となる何かをはらんでいるのだ。

深田晃司監督が奈義町に長期滞在

深田晃司監督は、実際に岡山県奈義町に長期滞在し、町の暮らしを経験し、住民たちの話を聞いたという。自然が広がる中、個性的な美術館や自衛隊の駐屯地があったりと、一見没個性的に見える土地が実は複雑な側面を抱えている。そのことに気づいた時、映画はできあがったも同然だったのかもしれない。奈義という土地のユニークな個性は、登場人物たちのキャラクターそのものなのだ。

ナギにとどまるか、出て行くか。寄子と友梨、春樹と圭太の2組はそれぞれ岐路に立つ。それは、互いに向き合うか、同じ方を向いて旅立つかの選択である。深田監督はどちらかを良しとせず、両者にエールを送る。と同時に、一組を包み込み、もう一組を励まし、見送るかのような、ナギという土地にも親密なまなざしを向ける。

「ナギダイアリー」(日、仏、シンガポール、フィリピン)は、新宿ピカデリーなどで公開中。1時間50分。