夏が近づくと、京都の花街では芸舞妓の名を刷り込んだうちわをあつらえる。お茶屋で客に渡されるほか、料理屋などの得意先に配られ、店に飾られる。
しきたりとデザイン
明治時代から花街向けの「京丸うちわ」を手がける「小丸屋住井」(京都市左京区)によると、表には舞妓が所属先の置屋の、独立した芸妓は自身の家紋を入れる。裏には芸名のほか、先斗町と上七軒は花街の名、ほかの花街では、舞妓は置屋の屋号、芸妓は自分の名字を入れるなどしきたりが異なるという。
小道具としての役割
舞踊の小道具にもなり、五花街の一つ、先斗町では周辺の風景を歌った「鴨川小唄」で用いる。先斗町の舞妓・秀しほさんは「うちわで、すだれやぼんぼり、月や鏡も表せます」と説明する。気を配るのは表と裏。振り付けで客席に向ける面が決まっている。
芸名を記した小道具は珍しく「知っていただく機会になるので、うちわを持って踊るのはうれしおす」。今夏も舞台やお座敷で、涼しさを届けている。(編集委員・木須井麻子)



