川喜多かしこ映画文化賞を新設、第1回受賞者に秦早穗子さん
川喜多かしこ映画文化賞を新設、第1回受賞者に秦早穗子さん

東京国際映画祭は7日、女性の映画人を顕彰する「川喜多かしこ映画文化賞」を新設し、第1回の受賞者に映画評論家の秦早穗子(さほこ)さんを選んだと発表した。1950年代後半からフランスで「勝手にしやがれ」「太陽がいっぱい」など名作の数々を買い付け、評論家としても日仏を中心に国際的な文化振興に貢献していることが評価された。

女性の選考委員3人による選考

川喜多かしこは、戦前から欧州の名作を日本に紹介してきた女性映画人の草分けとして知られる。その名前を冠した賞を創設するにあたって、「女性による、女性のための顕彰事業」として、女性の選考委員3人により選考が進められた。

10月26日に開幕する第39回東京国際映画祭のウィメンズ・エンパワーメント部門内で、川喜多記念映画文化財団の主催で授賞式が開かれる。

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秦さんの経歴と業績

秦さんは1931年、東京生まれ。57年に雑誌社の特派員として渡仏し、帰国後、洋画配給会社「新外映」に入社した。再びフランスへと渡り、買い付け担当としてジャック・タチ監督の「ぼくの伯父さん」、ジャンリュック・ゴダール監督の「勝手にしやがれ」、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」などを日本に輸入した。

カンヌ国際映画祭にも50年代末から通い、45年間にわたり、その模様を報告記事などの形で日本に紹介した。著書に「スクリーン・モードと女優たち」、「パリに生きる女たち」など。2012年に自伝的小説「影の部分」を発表し、日本映画ペンクラブ賞を受賞。朝日新聞夕刊の映画評を30年以上、手がけている。

川喜多かしこの功績と秦さんの決意

1929年に貿易会社「東和商事」に入社し、「禁じられた遊び」や「第三の男」など欧州の作品を輸入した川喜多かしこ。戦後はカンヌ、ベネチア、ベルリンなどの国際映画祭で審査員を務め、「マダム・カワキタ」として海外からも知られていた。フィルム・ライブラリー助成協議会を創設し、川喜多記念映画文化財団の理事長を務めるなど日本映画の保存、継承にも尽くしてきた。

日本における女性映画人のパイオニア的存在だ。その川喜多の名前がついた賞を受けることに秦早穗子さんは、「第1回にというお話をいただいた時、辞退を決心した」とするコメントを出している。取材にも「もっと若い人が受けるべきだと考えた」と話した。

それでも、考え直し、賞を受けることとしたのは、川喜多からかけられた言葉を思い出したからだという。男性社会である映画界を、独立心をもって生きてきた女性としての自身が受賞することで、同じように生きている後進を力づけることにならないか――そう考えるようになったという。

秦さんはコメントでこう続けている。

「かしこ夫人は、戦前・戦後を通して、女たちが参加も許されなかった時代、映画の輸出入、わけても選択に独自の目を持って活躍された。今も続く映画史の1頁(ページ)であり、女の暦史でもある。ある時、かしこ夫人は、私に囁(ささや)かれた。『女として、忍耐の場、いろいろありますものね。』実に、意味深い言葉。そのことを、つとにお伝えしたく、賞をいただくことを決意した」(原文ママ)

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