国の無形文化財に指定されている肥後琵琶の奏者が、熊本県内でわずか2人となっている。その1人、南関町の岩下小太郎さん(36)は、情感豊かな語り口と力強い琵琶の音にひかれて稽古を始めて10年。奏者の数が減る中、「残り火をわずかでも後世につなぎたい」と各地で披露を続けている。
図書館で朗読と琵琶のコラボ
南関町交流拠点施設〈ukara〉内にある町図書館に、肥後琵琶の深みのある音色が響いた。朗読と琵琶のコラボイベントで、朗々と語られる物語を琵琶の音が引き立てた。
岩下さんは施設の職員として働く傍ら、地域の祭りやコンサートなどで演奏を披露。朗読とのコラボのような新しい取り組みにも積極的だ。
盲僧琵琶の流れをくむ伝統
肥後琵琶は、盲目の僧侶がお経の伴奏などに用いた「盲僧琵琶」の流れをくむ。盲僧琵琶の系譜は薩摩藩が藩士教育に使った「薩摩琵琶」や、大衆芸能の色が濃い「筑前琵琶」に受け継がれ、肥後琵琶は目の不自由な人の間に広がった。現在では、岩下さんら目が不自由ではない人が継承している。
岩下さんの琵琶との出会いは、東海大阿蘇キャンパスに通っていた2009年。邦楽器への興味から、熊本市で開かれた邦楽の演奏会で筑前琵琶の音と語りを耳にした。華やかさにひかれ「筑前琵琶熊本旭会」に入会し、弾き方や語り方を覚えた。
熊本地震が背中を押す
JA阿蘇に就職した16年4月、熊本地震に襲われた。自身は大きな被害を受けなかったものの、天災を前に命のはかなさを感じた。当時、筑前琵琶奏者は全国に200~300人とされていたが、肥後琵琶はごくわずか。「生きていくなら、熊本の文化を残したい」と思った。



