フジテレビ系ドラマ『夫婦別姓刑事』の撮影現場で、共演者の佐藤二朗さんと橋本愛さんの間で身体接触をめぐるトラブルが発生した。この問題を報じた文春オンラインの記事に対し、SNS上では佐藤さんに向けて「接触が嫌なら役者辞めろ」といった批判が殺到。しかし、一連の経緯を詳しく検証すると、むしろフジテレビの制作現場におけるリスク回避志向の危うさが浮き彫りになっている。
トラブルの経緯と情報伝達の齟齬
佐藤さんの所属事務所の説明によると、フジテレビのプロデューサーは橋本さんの所属事務所から、橋本さんが過去のトラウマから身体接触に制限があることを聞かされていた。その上で、プロデューサーは佐藤さん側にその情報を伝えるかどうかを「お任せします」と橋本さんの事務所に託されていたという。
プロデューサーは佐藤さんのマネージャーにその事実を伝えた上で協議。日常動作のシーンでは影響がないことと、佐藤さんの芝居に制限をかけない方が良いという考えから、佐藤さん本人には伝えない判断をした。つまり、橋本さんと佐藤さんの間には、橋本さんの所属事務所、フジテレビのプロデューサー、佐藤さんの所属事務所という3者が介在していたが、コミュニケーション上の齟齬が生じ、十分な情報伝達ができていなかった(あるいは意図的に伝達しなかった)可能性がある。
「セクシー田中さん」の悲劇を想起させる構図
外部から見ると、当事者同士が直接コミュニケーションを取らず、間に複数の仲介者が入ることは非合理的に見える。しかし、映画やドラマの制作現場では、仲介者が入ることで摩擦を回避し、利害や関係の調整がスムーズに進むこともあり、珍しいことではない。ただし、今回はその手法が裏目に出た、あるいは有効に機能しなかったと言える。
当事者間で認識のずれが早期に共有され、第三者を交えた対話や調整が行われていれば、ここまで対立が悪化・表面化しなかった可能性もある。危機管理では初動対応が極めて重要であり、情報共有が不十分なまま時間が経過すると、問題は外部へ拡散しやすくなる。
2023年に起きた日本テレビのドラマ『セクシー田中さん』の原作者の自殺問題も、原作者と脚本家、制作側の摩擦が外部に拡散したことが悲劇を生んだと言える。今回の問題は決して特殊な事案ではない。
文春報道への批判とSNS上の反応
文春オンラインの報道に対しても、そのあり方を批判する声が上がっている。一部のネットユーザーからは「橋本さんが特別扱いされている」「佐藤さんだけが悪者にされている」といった意見が寄せられ、佐藤さんへのバッシングが加速。しかし、問題の本質は個人の資質ではなく、制作現場のシステムにあるとの指摘も多い。
フジテレビは今回のトラブルを受け、今後の制作体制の見直しを迫られることになる。リスクを回避しようとするあまり、かえってリスクを拡大させた今回のケースは、業界全体にとって警鐘となるだろう。



