若手お笑いコンビ「エバース」の佐々木隆史さん(33)が自らを語った著書『ここで1球チェンジアップ』(太田出版)は、同世代や若いファンに向けて刊行された一冊だが、実は40代や50代の人間にこそ役立ちそうだと強く感じる。
宮城県出身の佐々木さんは大学卒業後、一念発起してお笑い芸人を目指すため上京し、NSC(吉本総合芸能学院)に入った。しかし人見知りで友達ができず、町田和樹さんとコンビを組むことになったものの「ネタ見せ」の授業に出るのも面倒くさく感じるようになる。卒業後もアルバイトやテレビゲームに明け暮れ、たまに劇場に出る機会があっても自分をアピールせず、後ろの方でだるそうにとがったふりをしていた。
そんな彼にも長い人生の物語がある。子どものころから野球少年で、甲子園に行くのが夢だった。秋の宮城県大会では、強豪の仙台育英高に勝って優勝したが、夏は初戦で負けて夢はついえた。大学の途中で野球部はやめ、お笑いのDVDを見続けるようになった。
仕事はある目的に向かって進むものであり、結果がすべてだが、理解に苦しむ行動を取る人が現在のようになった理由を想像してみようかと思わせる力がこの本にはある。
「お前ら上に行く力はあるよ」――佐々木さんはあるネタをほめられたことから、芸人人生が動き出した。人を生かすも言葉、殺すも言葉である。今日は一球、言葉のチェンジアップを投げてみましょうか。デッドボール含みで。



