脳性まひの13歳が映画出演、卒業式で返事の変化
脳性まひの13歳が映画出演、卒業式で返事の変化

重い障害のある子どもを誘拐した犯人や、事件に関わった人たちの人間模様を描く映画「時には懺悔(ざんげ)を」に、東京都内に住む重症心身障害児のしんすけさん(13)が子ども役で出演している。寝たきりで話すことができず、表情だけで演じた。

寝たきりでも表情で演じる

しんすけさんは先天性の脳性まひで、特別支援学校に通っている。人工呼吸器をつけ、意思疎通は難しい。映画出演のきっかけは2023年秋。制作陣が、障害児支援に取り組む理学療法士の安田一貴さん(40)に紹介を依頼し、安田さんが以前関わりのあったしんすけさんとつないだ。

出演依頼を受けた母親(53)は当初、「息子にどんな影響があるかわからない」という不安から断った。しかし、その後もアプローチは続き、同年末には監督の中島哲也さん(67)が自宅を訪れ、「彼の笑顔には、生きることを楽しむ力を感じるんです」と語った。その言葉に母親は、「障害があれば誰でもいいわけではなく、息子を探してくれている」とうれしく感じたという。

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撮影での変化と共演者のコメント

原作小説の作者、打海文三さん(2007年に59歳で死去)が障害のある子を育てた親だったこともあり、「当事者の複雑な感情を表現していて、リアリティーがある」と感じ、夫やきょうだいとも相談して出演を決めた。

撮影は2024年3~5月に行われ、しんすけさんは「感情を表情に出すのが得意」で、笑顔やキョトンと驚いた顔など多彩な表情を見せた。共演した西島秀俊さんは事務所を通じた取材に、「お互いに『プロの俳優』として向き合い、やりたい表現を一緒に作り上げていきました。しんすけ君は演出を受けると、まっすぐに応えようとします。本番で時折見せる笑顔や、戸惑いの表情に本当に魅了されました」とコメントした。

橋渡し役となった安田さんは制作スタッフとして障害児への接し方を監修し、「俳優さん、カメラマン、メイクさん、みんなが撮影が進むうち、しんすけさんと自然に話すようになっていった。障害のある人たちとの共生は頭で考えるより、一緒に仕事をしていく中で理解できる」と話した。

卒業式での返事と映画の内容

撮影後、しんすけさんに変化があった。以前は学芸会などの学校行事に参加しても「状況をわかっていないようだった」が、昨春の小学部の卒業式では、先生から名前を呼ばれると「はー」と返事をした。中学部に入った後も、学校へ行く時間になると母親に「あーあーあー」と訴えかけるようになったという。

母親は「映画出演という環境の力は大きく、数ミリずつかもしれないけど、変わってきている」と喜び、「自分の主張がうまくできない子こそ、いろんな経験をさせてあげてほしい」と語った。

映画は、探偵の佐竹(西島秀俊)と助手の聡子(満島ひかり)が、同業者の米本(佐藤二朗)が殺された事件を調べるところから始まる。2人は、米本が生前調査していた明野(宮藤官九郎)と重い障害がある少年・新(しんすけ)の父子を追う中、9年前の新生児誘拐事件にたどり着く。

劇中では「この子は生まれてこない方が幸せでした」と過激なセリフも飛び交う。母親は、明野が「ああ、どこにも行けない」とこぼしながら新の世話を続ける場面が印象に残ったといい、「きれい事じゃない現実を描きつつ、愛情にあふれた作品」と話した。

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