布絵作家の宮元篤司さん(74)は、鹿児島県の奄美大島発祥の伝統的工芸品・大島紬の生地を貼り合わせて桜島を描く布絵を制作している。県内の美術展などで多数の受賞歴があり、鹿児島市内の石橋記念館やホテル南洲館には作品が常設展示されている。これまでの歩みや制作に込める思いを尋ねた。
大島紬を使い始めたきっかけ
「幼い頃から絵を描くのが好きで、料理人として働く傍ら、水彩画やハンドクラフトなどの制作をしていた。15年ほど前、大島紬の着物をリメイクして洋服にする仕事をする方から『これを使って何かやってみないか』と大島紬の端布をいただいた。試行錯誤の末、以前に蚊帳の布を使って貼り絵を制作したことがあったので、それを大島紬でもやってみようと思った」
制作方法とこだわり
「着られなくなった大島紬の古着の生地を小さく切り、アイロンで裏芯を貼って素材を作る。それをのりでベニヤ板に貼り付けていく」
「一作品にかける時間は約一か月。色々な柄を組み合わせながら桜島などを表現する。一度貼り終えた後でも『やっぱりなんか違うな』と思えば納得がいくまで何度も貼り直す。その繰り返し。大島紬の持つ柄の個性をつぶさないように組み合わせるのが難しい」
桜島をテーマに描く理由
「元々自然が好きというのもある。鹿児島で生まれ育ったので、自分にとって(桜島)は一番身近で描きやすい。同じ山でも、柄の組み合わせによって色々な姿を描くことができて楽しい」
大島紬を使う意義と今後の目標
「一度着物として使われた大島紬に、もう一度命を吹き込み、作品としてよみがえらせることができる。大島紬は世界三大織物と言われていて、日本の大切な文化の一つ。それに、泥染めをすることによって生まれる美しい光沢など他の布にはない魅力がある。着物としてだけでなく、美術品としても楽しんでもらいたい」
「日本の文化を伝えていくためにも、より多くの人に大島紬を知ってほしい。県内だけでなく、東京での展示なども準備しているところだ。作品を通して全国に大島紬の魅力を発信していきたい」
取材後記
この春、鹿児島に来てから初めて大島紬を知り、独特な柄や光沢の美しさに驚いた。
宮元さんの展示作品のそばには「蓮の花は泥より出でて泥に塗れず美しく咲きます。大島紬も泥で染められて美しい布になります」という言葉が添えられている。
生産反数の減少など課題もあるなかで、蓮の花のように泥染めで美しく光る大島紬の魅力を、より多くの人に知ってほしい。(中川清香)
◆みやもと・あつし=鹿児島市出身。幼い頃から料理と絵を描くことが大好きで、調理師専門学校を卒業後、県内のホテルや料理店で和食専門の料理人として働いた。現在も国際交流センターや東本願寺鹿児島別院などで月に数回、料理教室の和食の講師を務める。



