中年男性のボディーバッグ叩きは「安全な標的」消費…鈴木洋仁准教授が指摘する日本社会の異様さ
中年男性のボディーバッグ叩きは「安全な標的」消費

休日のイオンモールで、ボディーバッグをかけた中年男性の姿がSNSで揶揄の的となっている。神戸学院大学現代社会学部の鈴木洋仁准教授は、こうした風潮を「中年男性が安全に攻撃できる対象として消費されている」と批判する。誰にも迷惑をかけていない服装を嘲笑する社会のあり方は、健全とは言えないと指摘する。

「休日イオンモールおじさん」が標的に

発端は、X(旧ツイッター)に生成AIで描かれた縦型ボディーバッグを身につけた中年男性の画像とともに「地方の田舎のイオンモールでよく見かけるこういう格好の人本当に嫌い」という投稿がなされ、大きな話題を集めたことだ。これを受けてプレジデントオンラインでも「『ボディーバッグ』より評判が悪い…休日のイオンで見かける一発で『だらしないお父さん』になるNGアイテム」という記事が多くの読者に読まれた。

一方で、ヤフーニュースのコメント欄には「誰にも迷惑をかけていないのに、なぜそんなことを言われなきゃいけないんだ」という反論も少なからず寄せられた。暴力を振るったわけでも、不祥事を起こしたわけでもない。休みの日に便利だと愛用しているボディーバッグをかけて、家族とイオンに出かけているだけだ。

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「中年男性=叩いていい」という空気

鈴木准教授は、中年男性がなぜこれほどまでに揶揄の対象になるのか、その理由を分析する。若い男性なら「さわやかさ」や「あどけなさ」といった未熟さゆえの安心感を与えられる。高齢男性なら、時に頑迷さの象徴になりかねないものの、体力などから恐れの対象にはなりにくい。中年男性はその中間に位置するため、警戒されやすく、攻撃の的になりやすいという。

「若いころほど流行に敏感ではなくなり、かといって年寄りほどには開き直れない。そんな宙ぶらりんであるがゆえに、時として知ったかぶりをしがちになる。休日のイオンでの身なりにしても、若者ほどのセンスもなければ、高齢者ほどの定番でもない。どっちつかずのだらしなさが、叩かれる要因になる」と鈴木准教授は指摘する。

社会の「清潔感」要求と二重の不遇

鈴木准教授は、中年男性が「権力者」と見なされる一方で、個人としては弱いという矛盾を抱えていると述べる。女性をはじめとしたこれまで少数派に置かれてきた人々を叩けば批判を浴びるが、中年男性は多数派であり、叩かれてしかるべき権力者の側とみなされている。こうした要素が重なり、「中年男性=カジュアルに叩いていい」という空気が共有されているのだ。

さらに、氷河期世代の中年男性は「二重の不遇」を経験している。就職難の時代を生き抜き、現在も不安定な雇用や低賃金に苦しむ層が多い。にもかかわらず、社会は彼らに「清潔感」や「だらしなさのなさ」を過剰に求める。鈴木准教授は「世間が求める清潔感の正体は、実は『管理しやすい』という基準ではないか」と疑問を投げかける。

胸を張ってボディーバッグを使えばいい

鈴木准教授は結論として、中年男性は気にせず堂々とボディーバッグを使えばいいと主張する。「誰にも迷惑をかけていないのだから、他人の目を気にする必要はない。むしろ、自分たちのライフスタイルを肯定し、自信を持って振る舞うことが重要だ」と語る。

また、若者は必ずしも「おじさん」を敵視しているわけではないとも指摘する。SNSで目立つ一部の声に過敏になるのではなく、世代間の相互理解を深めることが健全な社会への第一歩だとしている。

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