年間20万人が押し寄せる「うさぎの島」こと大久野島。しかし、その人気は地元経済に十分な恩恵をもたらしているとは言い難い。観光客の多くは島を訪れるだけで、玄関口である忠海港周辺には滞在してお金を落とす場所がほとんどないのが現状だ。
土産物店の苦戦とターゲット変更
大久野島にある休暇村の土産物店を運営する松本さんは、当初ファミリー向けの商品を扱っていたが、競争を避けるためターゲットを大人に絞り、うさぎのロゴがついたオリジナル商品でブランディングしていった。読みが当たり赤字は解消できたが、それでも大きな利益は出ていないという。
忠海港周辺の現状
忠海港には港湾施設の一部である「忠海港待合所」があり、その中に小さな店が営業している。うどんやおにぎり、パンなどの軽食やお菓子を販売しており、店の人は「待合所の中に売店が欲しいという声があり、県が設置したんです。私たちはその店を借りて営業しています」と話す。忠海港で買い物ができるのは、ターミナルとこの売店の2軒しかない。
忠海駅周辺も事情は厳しい。松本さんは「忠海を通る電車は1時間に1本のJR呉線しかありません。本数が少ないので車で来る人が多いんです。飲食店を構えてもアルコールを提供しにくく、商売になりません」と指摘する。つまり、忠海には観光客が滞在してお金を落とす場所が現在ほとんどなく、素通りの状況なのだ。
竹原市の周遊施策と課題
竹原市産業振興課 商工観光振興係の岡 夢佳さんは「休暇村での消費の増加は、竹原市の税収にもつながっています。ただ、観光客の増加が周辺へ経済効果をもたらしたかというと、一概には言えず、十分にお金を落としていただけていない部分もあります」と語る。
竹原市では、忠海港から車で15分ほどの「たけはら町並み保存地区」へも足を延ばしてもらおうと、これまでも周遊施策に取り組んできた。しかし、「うさぎを目的に来る方たちに、歴史的な町並みにも立ち寄ってもらうことは、少し難しい面がありました」という。町並み保存地区を訪れるのは年配層が多い一方で、大久野島を訪れるのはファミリー層や若い層が中心で、ターゲット層が異なるため周遊は見込みにくい。
大久野島未来づくり実行委員会と4つのルール
関係者は観光客増加によって生じた課題を放置しているわけではない。環境省は2021年、地元の関係者(竹原市、休暇村、フェリー会社、忠海町住民、うさぎ愛好家)と共に「大久野島未来づくり実行委員会」を組織した。委員会で協議し、うさぎに関する以下の4つのルールをまとめた。
- うさぎにさわらない 手から直接餌をあげない
- 道路上で餌をあげない 足元のうさぎに注意
- 食べ終わるまで見守る 食べ残しは持ち帰る
- ペット(生き物)を連れてこない うさぎを持ち出さない



