大阪府豊中市にある「夢の公衆浴場五色」は、「日本一」を掲げる銭湯だ。約40年前に約700坪(約2300平方メートル)というかつてない規模で誕生し、現在も24時間営業で無休という異例のスタイルを続けている。60台の駐車場を備え、11種類の風呂やサウナ、飲食コーナーも併設。地元では「庄内のソウルフード」と呼ばれるうどんも楽しめる。
創業の歴史と「夢のある風呂屋」への思い
3代目の上原大輝さん(32)は「五色に改名したときに夢のある風呂屋にしたいと考えたそうです」と話す。上原家は昭和初期に銭湯事業を始め、ピーク時には親類縁者が営む銭湯が市内に10軒ほどあった。亡き祖父の義正さんは、東京五輪が開催された昭和39年に前身の「五色温泉」を開業。その後も土地を買い足し、建物や駐車場を全面改修し、62年に現在の規模の五色を完成させた。
その存在は同業者を驚かせ、「これを機に銭湯の大きさの基準ができたそうです」と大輝さん。大阪府では現在、一般公衆浴場の全体面積は550平方メートル未満と定められている。
多彩な風呂と「お客さまファースト」の伝統
2階の大浴場には、低・高温風呂、ジェットバス、電気風呂、薬湯など11種類の風呂やサウナがあり、台湾の古代ヒノキを使用した人工の「高濃度炭酸泉」はとろりとした湯で温泉のようだ。露天風呂には「逆さ富士」のタイル絵もあり、夏場は「ぬる湯」に設定されている。
開業時から勤務する支配人の甲斐幸雄さん(60)は「お客さまファーストが初代の口癖でした」と義正さんの思いを受け継ぐ。現在は高校生から70代までの約50人が働き、温かく家庭的な雰囲気が利用客に安心感を与えている。甲斐さんは「系列の銭湯は全てなくなった。五色が生き残れたのは法人化や機械化の影響も大きいが、従業員みんなの頑張りのおかげ」と感謝する。
名物うどんと歴史を感じる鯉
飲食コーナーでは「カレーうどん」(600円)や「肉うどん」(同)が人気で、いずれも国産黒毛和牛を使用。「カレーのスパイスはうちのオリジナル」と大輝さん。中年の男性客は「お風呂に来たらだいたい食べる。肉うどんおいしいで」と薦める。
ソフトクリームは250円、貸しタオルやシャンプー類も30円とリーズナブルで、「家風呂があってもわざわざ来てくれるお客さんに、なるべくお金をかけずに満足してもらいたい。それが五色の方針」と大輝さんは話す。
ロビーでは鯉が飼われており、甲斐さんは「鯉のことを知る人はもう少ないかもしれんなあ」と述べ、豊中市庄本町の神社「椋橋総社」では鯉が「神の使い」とされ、地元で大切にされてきたと教えてくれた。「この辺の地主さんも昔は池で鯉を飼ってたよ」と話すように、五色には夢だけでなく歴史も息づいている。



