95歳にして現役の人間国宝・野村万作と、長男で多彩なジャンルに才能を発揮する野村萬斎、新世代の旗手である孫の野村裕基。和泉流狂言方の3代がそろう狂言公演が今秋、関西で相次いで開催される。
大阪では万作のライフワーク「川上」
今月18、19の両日に大阪市中央区の大槻能楽堂で開催されるのは「第1回狂言 万作・萬斎・裕基の会 in 大阪」。昨年公開された万作のドキュメンタリー映画「六つの顔」に登場する3演目を上演する。中でも万作がライフワークとする名作「川上」が披露されるのが眼目だ。
物語の舞台は吉野の里。盲目の夫が川上の地蔵に参詣したところ、目が見えるようになる。だが、地蔵のお告げは「妻とは悪縁だから離別せよ。そうでないと再び目がつぶれる」というものだった。万作は何度も演じ重ねており、3年前には実際に作品の舞台である奈良県川上村を訪れて「川上」を上演した。
「昔、父(六世野村万蔵)に習ったのは、ラストシーンで妻が夫の手を引っ張って幕に入るというやり方でした。しかし、私は夫婦の情愛を印象深くするため、ともに手を取り合って入っていく演出に変えました。夫婦愛が地蔵さまのお告げに勝つと思って演じています」
京都では萬斎の還暦記念公演
萬斎は狂言の人気曲「棒縛」、裕基は「奈須與市語」を勤める。そして、11月15日に京都市左京区の京都観世会館で行われるのは、萬斎が主宰する「狂言ござる乃座 in KYOTO 21st」。今年は萬斎の還暦を記念した公演となる。
演じるのは「庵の梅」。老尼(萬斎)の庵の梅の花が美しく咲いたので、大勢の女性たちが花見に訪れる。それぞれ和歌の短冊を老尼に見せ、やがて酒席となると、老尼も昔に思いをはせて舞を披露する。「比丘貞」「枕物狂」とともに、「三老曲」として狂言界で大切に扱われている曲だ。「現代でいう女子会ですね」と萬斎。「世阿弥のいう『老木の花』を体現するのが本曲。梅の香りが漂うよう勤めたいと思います」
萬斎は「父が長寿で舞台に立っているというのは、芸の在り方を見せていただく上でとてもありがたい。3人とも個性が違うので、それぞれの芸風を生かして歩んでいきたい」と語る。
3代そろっての上演も
令和5年に文化勲章を受章した万作は「うちの狂言は、まず美しく、次に面白く、最後におかしく、です」と話す。「狂言ござる乃座」では他に万作、萬斎、裕基の3代そろった狂言「末廣かり」などが上演される。
4月に還暦を迎えた萬斎は「うちの家では父と息子の間で私は中間管理職的な位置。今後も心技体、充実した舞台を作り上げていきたい」と力強く語った。両公演とも問い合わせは万作の会(03-5981-9778)。



