東京都世田谷区立武蔵丘小学校で9月下旬、子どもたちが将来、性暴力の加害者にも被害者にもならないために必要な知識を伝える「生命(いのち)の安全教育」の試験的な授業が行われ、メディアに公開された5年生の授業を見学した。
この授業は、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンが、自分の心と体、生き方について自分で決める権利「SRHR」を日本国内で広く知ってもらうための活動として、今年の夏から出前授業で展開しているもの。
「いや」と言える? プライベートゾーンを学ぶ
5年生を対象に行われた授業のテーマは「同意」。講師が「友達にお願いされたとき、いやなことは『いや』と言える人は左手を、ちょっと言いにくいと思う人は右手を挙げてください」と声をかけると、子どもたちがパラパラと手を挙げた。右手の子も、左手の子もいる。「いやだ」と思っても、口には出せないと感じている子もいるようだ。
続いて、講師が「『他の人に触られたくない』と思う部分にシールを貼ってみて」と指示。子どもたちの手元には体操服を着た子どもの全身が描かれたイラストが配られ、お尻、胸、口などに次々とシールを貼っていく子がいれば、隣の子のイラストと見比べながら考え込むような表情をする子もいた。
講師は「シールを貼ったところはプライベートゾーン。自由に触っていいのは自分だけです。家族でも、友達でも、先生でも、じろじろ見たり、勝手に触ったりしてはいけません」と優しく語りかけた。
「危険なふれあい」の判断と同意の大切さ
子どもたちが一番悩む様子を見せていたのは、2人の子どもがじゃれ合うイラストを示されて、「これは安全なふれあいですか? 危険なふれあいですか?」と問われた時。イラストでは、1人の子どもがもう1人のわきの下やおなかの辺りを笑顔でくすぐっており、くすぐられている方は笑顔とも泣き顔とも判別できない表情をしている。
講師が「くすぐられている人が『楽しい』って言っていたら?」と尋ねると、子どもたちは「安全」と回答。「『やめて』って言っていたら?」には「危険」と答えた。講師は「くすぐったすぎて、声が出ない時もあるよね?」と投げかけ、「やめて、気持ちを確かめてみる必要があるね。それを『同意』っていいます」と、言葉で相手の気持ちを確かめることの大切さを伝えた。
「同意」は安全・安心に人と関わるための方法で、子どもたちが将来、望まない妊娠や性暴力から身を守るためにも必要なコミュニケーションだ。
「いいよ」と「いや」のサインを仕分ける
授業では、「いいよ」「う~ん」といった言葉や、「……(無言)」「うなずく」「だまる」などの動作が書かれたカードを、「いいよ」のサインか「いや」のサインか判断して分けていく作業も行われた。
講師が「『いやだ』のサインはどれですか?」と尋ねると、子どもたちは「『う~ん』『……』『だまる』?」と回答。講師は「よくわかったね。でも、『いいよ』って言っても、本当はいやだってことありませんか」と問いかけ、「そう、だから本当にいいかどうかっていうのは、慎重に確認しないといけないね。下を向いているとか、どんな顔をしているかとか。それでも分からないことがあるから、言葉で確認し合うと分かりやすいね」と説明した。
日本には古くから「嫌よ嫌よも好きのうち」ということわざがあるが、これは現代のコミュニケーションにおいては完全にアウト。男女間の駆け引きであっても、「嫌よ」は明らかに「いやだ」のサインだと判断すべきだろう。「う~ん」「……」「だまる」といったあいまいな表現を、即座に「いやだ」のサインだと見抜いた子どもたちの判断力に驚かされた。
授業の後、子どもたちは記者に、「今まであまり自分の意見を言えなかったけれど、言ったら気持ちがすっきりするのかも」「もやもやしたら自分一人で抱えるのではなく、周りの人に話してみようと思った」などと感想を語った。これからの時代を生きる子どもたちが、自分の気持ちを伝え、相手の気持ちを受け止めることの大切さをしっかりと学ぶことで、いい人間関係を築いていくことが期待される。