第64回日本SF大会、大分市で開催 AI時代に「本質は人間を描くこと」と人間六度さん
第64回日本SF大会、大分市で開催 AI時代にSFの本質を語る

第64回日本SF大会が7月に大分市で開かれ、SF作家とファンが交流した。AI(人工知能)などの科学技術が急速に発展し、空想で描かれた近未来に現実が追いつきつつある中、参加者はSFの現代的意義を語り合った。

約600人が参加し、シンポジウムや同人誌販売会を開催

日本SF大会は1962年から全国各地でほぼ毎年開催されている。ファンらでつくる実行委員会が主催し、プロの作家とファンが自由に語り合う垣根の低さが特徴で、星新一や小松左京、筒井康隆さんらも参加してきた。今大会には熊本市在住のSF作家、梶尾真治さん(78)や漫画家のとり・みきさんらが出席。「日本の民間ロケット」「大分宇宙港実現」「九州のファンダム史」などのテーマでシンポジウムや読書会、同人誌販売会が行われ、約600人が交流した。

AIをめぐる議論で「サイバーパンク」の現実化を指摘

中でもAIは注目のテーマだった。パネリストがAIについて議論した企画では、物理学者の菊池誠さんが、人間がAIに悩み事を相談したり恋愛対象にしたりする現状を「現実世界がオカルト化している。まさに“サイバーパンク”だ」と表現。近未来SFの一ジャンル「サイバーパンク」で描かれてきたディストピア的な世界が実現しているとの指摘があった。

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SF・ファンタジー評論家の小谷真理さんは、ウクライナなどの戦場でAIを備えたドローン(無人機)が戦況を左右している状況を念頭に、「SFにはとんでもないアイデアが豊富に盛り込まれている。昔のSF映画で見た戦闘風景が現実化したように、SFの大胆な発想がAIによって実現され、戦場で使われる恐れがあるのでは」と話した。

星雲賞受賞の人間六度さん「SFの本質は人間を描くこと」

若い世代の作家はSFの今後をどう見ているのか。会場で星雲賞(日本長編部門〈小説〉)を授与された作家で日本大学芸術学部非常勤講師の人間六度さん(31)は、「どれほど科学が発達しても、SFの本質は人間を描くこと」と語った。

受賞作『烙印の名はヒト』(早川書房)は、近未来が舞台の長編小説。主人公のラブは介護施設で働くアンドロイドで、入所者の女性に頼まれてその女性を殺し、無期懲役の判決を受ける。古典的SFに登場するロボットは「人間になりたい」と願うのがセオリーだが、ラブは自分が人間ではないと証明するために戦う点がユニークだ。人間の欲や傲慢さに直面したラブの〈何もかもが人の都合じゃないか!〉という叫びが切実に描かれている。

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