ベネチア国際映画祭でオリゾンティ部門審査員特別賞を含む3つの賞を受賞した映画『LOST LAND/ロストランド』が話題を呼んでいる。本作は、世界で最も迫害されている民族とも言われるロヒンギャ難民の過酷な現実を描いている。脚本・監督を務めた藤元明緒氏とプロデューサーの渡邉一孝氏に、作品の背景と制作秘話を聞いた。
ロヒンギャ難民とは何か
ロヒンギャ難民は、主にミャンマー西部のラカイン州に居住していたイスラム教徒の少数民族だ。ミャンマー政府から不法移民とみなされ、国籍を剥奪され、長年にわたり無国籍状態に置かれてきた。2017年にはミャンマー国軍による村の焼き討ちや組織的な性暴力を含む大虐殺が発生。国連の発表によれば、118万人以上が隣国バングラデシュに避難している。
監督の葛藤と作品への想い
藤元監督は、大虐殺が起きた当時、仕事でミャンマーに滞在していたが、沈黙を余儀なくされたという。「仕事の機会を失うことも怖かったですし、ミャンマー国内でタブー視されている彼らについて、自分から言及しづらい面がありました」と振り返る。
しかし、2021年2月のミャンマー軍事クーデターを機に、監督は自身のダブルスタンダードを自覚した。クーデター後には様々な支援活動を行ったが、2017年のロヒンギャ大虐殺のときには沈黙してしまったという負い目を感じたという。「映画を通してロヒンギャの人々とつながりたい、この題材を撮っておかないと後悔すると思い、取り組み始めました」と語る。
実在のロヒンギャ難民を起用
本作の主人公は、難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラ。2人は家族との再会を願い、叔母と共にマレーシアへ旅立つ。パスポートを持てない彼らは密航業者に導かれ、漁船で過酷な旅に出る。自然の猛威や人身売買の危機に直面しながらも、姉弟は困難を乗り越えていく。
特筆すべきは、主演の姉弟が実際のロヒンギャ難民であることだ。藤元監督は「彼らのリアルな経験と感情が、作品に真実味を与えている」と語る。
製作費1億円以上を調達できた理由
本作はバングラデシュ、タイ、マレーシアなど数カ国で撮影が行われた。製作費は1億円以上に上るが、クラウドファンディングなどで資金を調達した。渡邉プロデューサーは「移民問題が世界的に注目される中、支援の輪が広がった」と説明する。
作品が問いかけるもの
藤元監督は「こういう人たちがいることを知るために見てほしい」と訴える。激動する世界情勢の中で、移民問題がクローズアップされる今、本作は私たちに何を問いかけているのだろうか。映画『LOST LAND/ロストランド』は、実在するロヒンギャ難民の姉弟が自らの役を演じることで、観客に強いメッセージを伝えている。



