映画『レンタル家族』の拡大公開記念舞台あいさつが21日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われ、主演の荻野友里、出演の黒岩徹、監督の上坂龍之介ら総勢13人が登壇した。新宿のミニシアター1館から始まった本作は、口コミを追い風に全国53館へと上映規模を拡大。上坂監督は、映画に込めた祖父への思いを涙ながらに明かした。
新宿1館から全国53館へ
本作は、認知症の母親を介護する主人公が「レンタル家族」というサービスを利用する中で、現代における家族のかたちや絆を見つめ直していく人間ドラマ。兵庫県出身の上坂監督が初めて手がけた自主映画で、長編監督デビュー作となる。
観客投票によってグランプリを決める「第23回中之島映画祭」でグランプリを受賞。2025年12月に新宿・K's cinemaで実施した1週間限定の自主上映は、全回満席を記録した。反響を受けて配給会社がつき、今年7月31日から同館で本公開されると、22日間連続でオンラインチケットが完売。SNSや口コミを通じて評判が広がり、8月21日からTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズなんばほか全国53館で拡大公開が始まった。
監督が語った制作の原点
新宿の単館上映から全国規模の公開へと至ったその軌跡は、『カメラを止めるな!』(2017年)や『侍タイムスリッパー』(2023年)といった、自主制作から始まり口コミの力でヒットへとつながった過去の作品群を想起させるものとなっている。
短編映画を含め、これまで自主映画を撮った経験がなかったという上坂監督。制作当初について「映画祭に出せたらいいよね、ぐらいの気持ちで始めた」と振り返り、連日の満席やTOHOシネマズでの上映に「まさかここまでになるとは」と驚きを隠せない様子。商業映画さながらの評価を受けていることについては、「いや、これ自主映画なんやけどな」と苦笑し、戸惑いと喜びが入り交じった心境を明かした。
映画を撮るきっかけとなったのは、数年前に亡くなった父方の祖父だった。兵庫県から上京して映画監督を目指していた上坂監督は、「おじいちゃんに映画を見せられなかった」「何しに東京に行ったんだろう」という後悔から、「だったら映画を撮ろう」と決意したという。
故郷での上映に安堵の涙
さらにこの日は、これまで公にしてこなかったという母方の祖父についても初めて言及。現在、体調を崩していることを初めて明かし、「『レンタル家族』しか、スクリーンで見せてあげられるラストチャンスがない。だから、もうやるしかなかった」と、自主上映に向けて2~3カ月にわたり自らチラシを配り続けた原動力を語った。拡大公開によって故郷・兵庫県での上映も決まり、安堵と喜びの涙を見せた。
荻野は、そんな上坂監督を「よく泣く監督です!」と笑顔で紹介。「こんな監督の人柄がよく表れている映画になっていると思います」と作品の魅力を語った。全国公開が報じられて以降、友人たちから驚きの声が相次いでいることも明かした。
福岡出身の黒岩は、地元・福岡でも上映が始まったことに触れ、「同級生から『泣けた』と連絡があった」と報告。作品の反響が全国へ広がっていることを喜んだ。
最後に上坂監督は、「僕とスタッフ、キャストとベストで作った作品」と制作陣へ感謝。「映画監督として1本目の作品で、何よりも思い入れのある作品」とした上で、「ここまで来ていただいたお客さまが、映画監督としての僕の初めてのお客さまになります」と深く頭を下げた。舞台あいさつにはこのほか、駒塚由衣、中本梨那、松林慎司、中村芽生、田中壮太郎、鈴木浩文、小野孝弘、白木ひこ、荒岡龍星、村尾俊明が登壇した。



