「戦争孤児たちの輝きが爆発」西川美和監督、映画「わたしの知らない子どもたち」今秋公開
「戦争孤児たちの輝きが爆発」西川美和監督、映画「わたしの知らない子どもたち」今秋公開

西川美和監督が戦後の混乱期を生き抜く戦争孤児たちを描いた映画「わたしの知らない子どもたち」が今秋公開される。被爆地、広島市出身で戦争の悲惨さや平和教育に囲まれて育った監督にとって、戦争は重過ぎるテーマだった。しかし、前作「すばらしき世界」(令和3年公開)の原案となった「身分帳」(佐木隆三著)を通して戦争孤児に関心を持ち、本作の制作に至ったという。15日の「終戦の日」を前に、西川監督が作品について語った。

自身で脚本も

戦後、約12万人もいたとされる戦争孤児。「『身分帳』には戦争孤児があの時代をどう生きたかということがノンフィクションに近い筆致で書かれていた。彼らはしたたかで狡猾で、生きるために手段を選ばず、手を差し伸べてくれる大人に取り入って生きていく。彼らが戦後の裏社会に吸収されていった端緒のような気がして興味深かった」

ただ、そうした戦争孤児を「すばらしき世界」では描き切れなかったとの思いがあった。もう一度、「戦争孤児たちを調べてみたい」と資料を読み始め、本作の企画がスタート。監督自身が脚本も担った。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

少年だけでなく本作では、音楽家の父(竹野内豊)のもとに育った12歳の少女、琴子(小八重葵美)が空襲で家も家族も失い、焼け野原の東京で、少年のふりをしながら生き抜く姿を描いている。「戦争孤児は路上で少年たちが群れを成しているイメージがあるが、同じだけの戦争孤児の少女もいたはず。ただ、少女にとって路上生活は過酷で、劣悪な環境の収容施設に残って食うや食わずの生活を強いられたり、里子に出され児童労働させられたりしていた」

皆で背景を勉強

終戦当時、街には進駐軍相手の慰安施設や路上売春が広がり、低年齢の少女も性的搾取の対象になっていたことも背景にあるようだ。主人公の琴子が髪を短く刈り、少年の姿になったのも、そんな危険から逃れるためだった。

本作で監督が大切にしたのが、戦争孤児役で出演する子供たちと丁寧に向き合うことだった。「はだしやげたで走るのを経験したことがない。戦争のバックグラウンドや空襲のことも皆で勉強した」

琴子の担任教師役の二階堂ふみや漁師役の役所広司、闇市を束ねるヤクザ役の岡田准一、新聞記者役の坂東龍汰らキャストも、出演する子供たちへの協力を惜しまなかったという。「子供たちは撮影現場でいきなり演じるのは難しく、言葉遣いもせりふ回しも事前に練習しないといけない。リハーサルを重ねたが、その現場にみな来てくれた」と、作品に対する出演者の熱意が伝わるエピソードも紹介。「私自身、子供たちに届くいい作品にしたいと思って作っていたが、大人のキャストも共感してくださったのか、誰もが『子供たちファースト』でとてもやさしかった」

記憶の継承へ

戦争は終わっても続く惨禍を描いた本作。戦争映画を避けてきた監督が本作を手掛けたのには、戦争の記憶が薄れていく現状に危機感を抱いたこともある。「私自身、戦争映画を積極的に見たいと思っていなかったが、戦争のつらい記憶は入ってきた世代。最近は子供たちにはショックが強過ぎるなどの理由で、親は戦争映画を見せようとしない。私たちの国に実際にあったことが忘れられていく時期が来ているという思いが年々、募っていた」

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

そして、本作についてこう紹介した。「どうしたら親が子供にも見せられる作品と思ってもらえるかを軸に考えた。戦争映画と思われるかもしれないが、作品を見た人は気持ちが軽やかになり、明日も頑張って生きなければという気持ちになると思う。戦争孤児たちの生き生きとした輝きが爆発している映画なので、重たく捉えずに見てほしい」

◇10月16日から全国公開。2時間30分。(水沼啓子)