セドリック・クラピッシュ監督の最新作『モネと時間旅行』(2026年9月18日公開、配給:セテラ・インターナショナル、協力:ユニフランス)の監督インタビュー映像が公開された。本作は19世紀と現代を舞台に、ベル・エポックを生きた謎の女性アデルを巡る物語。監督自身が愛してやまない「19世紀のパリ」を映像化し、現代の物語と交差させながら一枚の絵画に隠された謎を紐解く構造だ。
実在の芸術家たちが登場
2026年は印象派の巨匠クロード・モネの没後100年にあたる。本作にはモネをはじめ、ルノワール、セザンヌ、写真家のフェリックス・ナダール、作家のヴィクトル・ユゴーなど実在した芸術家たちが登場。オルセー美術館やオランジュリー美術館、モネの『睡蓮の庭』といった名作絵画や印象派の聖地も物語を彩る。
現代の主人公セブを演じるのは、カルティエのCM撮影でクラピッシュに見出されたアブラム・ヴァプレ。遺産の屋敷を捜索する個性的な親戚には、『画家ボナール ピエールとマルト』(2023)のヴァンサン・マケーニュ、『最高の花婿』(2014〜20)シリーズのジュリア・ピアトン、クラピッシュ作品でおなじみのジヌディーヌ・スアレムが名を連ねる。
若手俳優が彩るアンサンブル
19世紀の主人公アデルには、ヴァンサン・ランドンとサンドリーヌ・キベルランの娘で『スザンヌ、16歳』(2020)で監督・主演デビューしたスザンヌ・ランドン。アデルの友人アナトールにイレーヌ・ジャコブの息子で『動物界』(2023)のポール・キルシェ、ルシアン役に『モンテ・クリスト伯』(2024)のヴァシリ・シュナイダー、恋人ガスパールに第79回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したヴァランタン・カンパーニュら若手俳優が起用されている。
さらにセシル・ドゥ・フランス、オリヴィエ・グルメら名優や、クラピッシュの熱望で出演し劇中で歌も披露するミュージシャンのPOMなど、年代も様々なフランスの俳優たちによるアンサンブルが、家族のルーツを探る物語に心地よさと温かさをもたらしている。
3年に及ぶリサーチと独自の映像表現
クラピッシュ監督は作品の準備に「3年の歳月」を費やしたと明かし、「自分が印象派についてよく知らないと気づき、徹底的に調べて、美術史の専門家の話も聞いた」と振り返る。脚本家とともに何度も美術館へ足を運び、絵画や写真、書籍まで膨大な資料を収集。モネやモリゾ、ナダールら著名人だけでなく名もなき人々の暮らしにも目を向け、「時代を内側から理解したかった」という言葉通り、当時の人々の感覚や空気まで映像に落とし込んだ。
映像表現では、デジタル映像特有の「冷たくて整いすぎた質感」を避けるため、撮影監督とともに新たな表現を模索。世界初のカラー写真「オートクローム」に着目した。オートクロームはジャガイモのでんぷんを利用して三原色を表現する写真技法で、リュミエール兄弟や写真家ラルティーグらも使用していたという。
その独特の質感を再現するため、フィルム撮影やデジタル処理など様々な方法を検討した結果、複数のデジタル処理を組み合わせ、シーンごとに色彩を細かく調整する繊細な作業に到達。粒子感を加えたり映像要素を「ブレンド」したりしながら、デジタル処理の割合を10%、30%、50%と変化させ、「ある色は鮮やかに、他の色は彩度を落とす」など一律ではない緻密な色彩設計を施した。
印象派との意外な共通点
クラピッシュ監督は、これまでの『スパニッシュ・アパートメント』(2002)や『猫が行方不明』(1996)のような即興的な街頭撮影スタイルとは大きく異なり、「すべて綿密に計算した、幾何学的とも言える撮影」だったと振り返る。
また、現代人がAIなどの新技術で新しい映像表現を模索する一方、印象派の画家たちも光と色をめぐって新たな表現を追求していたことに触れ、「現代技術が可能にする表現と、19世紀の画家が生み出した技法との間に、深い呼応があるのは興味深い」と言及した。
時代を忠実に再現するだけでなく、現代技術を通して19世紀の芸術家たちの挑戦と呼応させる。30年以上にわたりパリを撮り続けてきたクラピッシュ監督だからこそたどり着いた、過去と現在をつなぐ映像表現へのこだわりが込められている。
ストーリーと主な出演者・スタッフ
ノルマンディーの草原に、長い間閉ざされていた古い屋敷が佇んでいた。相続権を持つのは面識のない30人以上の一族。土地開発のため屋敷の売却を迫られ、パリで暮らすセブ、アブデル、セリーヌ、ギイの親戚4人が一族を代表して調査することに。やがて屋敷から印象派の作品らしき絵画や、先祖アデルの手紙や写真を発見する。19世紀にノルマンディーからパリへ旅し、ベル・エポックを生きた謎の女性アデル。彼女と絵画にまつわる秘密が解き明かされた時、過去と現在、理想と現実が出会い、それぞれの人生に新たな扉を開く。
出演者は以下の通り。
アデル:スザンヌ・ランドン/セブ:アブラム・ヴァプレ/ギイ:ヴァンサン・マケーニュ/セリーヌ:ジュリア・ピアトン/アブデル:ジヌディーヌ・スアレム/アナトール:ポール・キルシェ/オデット:サラ・ジロドー/カリクスト・ドゥ・ラ・フェリエール:セシル・ドゥ・フランス/モネ:オリヴィエ・グルメ/ルシアン:ヴァシリ・シュナイダー/ガスパール:ヴァランタン・カンパーニュ。監督・脚本はセドリック・クラピッシュ。



