香取慎吾、東野圭吾原作『虚ろな十字架』で新境地「あまり見たことのない香取慎吾に」
香取慎吾、東野圭吾原作『虚ろな十字架』で新境地「あまり見たことのない香取慎吾に」

俳優の香取慎吾が、WOWOW連続ドラマW東野圭吾『虚ろな十字架』(6日スタート、後10:00、全4話)の合同インタビューに参加し、役作りや共演者との再会、撮影を通して生まれた自身の変化、原作者・東野圭吾さんへの思いを語った。

重いテーマの作品に「いつもの僕では立ち向かえない作品だったかもしれない」

今作は、東野圭吾氏が2014年に発表した同名小説を初めて映像化した社会派サスペンス。「死刑制度」という普遍的なテーマに真正面から切り込み、被害者と加害者、それぞれの家族が抱える苦しみを描く。主演を務める香取は、WOWOW連続ドラマ初主演、東野氏作品でも初主演。11年前に起きた人生を揺るがす“ある事件”をきっかけに、孤独と虚しさを抱えて生きる主人公・中原道正を演じる。

死刑制度という答えのないテーマを扱う作品の主演を務めることについて、香取は「重いテーマではありますけど、あくまでもドラマであって、エンタメ作品として、瀬々敬久監督やスタッフの皆さんが僕を求めてくれたので、答えたいなという気持ちで受けました。しかし、現場に入ったらそんな簡単なものではなかったです。今まで味わったことのない世界でした」と明かした。

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さらに「いつもの僕では立ち向かえない作品だったかもしれないです。また、どちらかというと僕は明るい作品やキャラクターが多く、少し離れているのかなと思っていたので、東野先生の作品に参加させていただけることは本当にうれしかったです。今の僕に来るべくして来てくれた役だったのかなと思っています」と語った。

役作りとプライベートの切り替え

中原という役については「どこか落ち着いていて、俯瞰で物事を見ている人。心の動揺もあるはずなのに。イスに座る、立つという所作も、一呼吸を置いて慌てる素振りがないです」と説明。自身との共通点については「全体を通して、どちらかというと似ているなと思いました。鈴木杏さんが演じる妻・小夜子の考えと中原の考えがズレることがあり、僕は中原の考え方のほうが近いのかなと感じました。また、あまり動揺しないところも似ているところかもしれません」と述べた。

役作りについて「皆さんが知っているような『明るい慎吾ちゃん』じゃない部分の引き出しから、中原を連れてきた感じがあります。お芝居をする際にディテールはあまり気にしてこなかったですが、実は、中原はポケットに手を突っ込んでいないです。今回は早い段階で意識していました」と明かした。

役とプライベートが混ざることについては「自分ではないつもりです。今回はたまたまですが、稲垣吾郎さんと草なぎ剛さんと3人で全国を回るファンミーティングの準備をしている時に撮影をしていました。演出も担当していたので、裁判所のシーンの横でオンラインで打ち合わせをしていました。後から考えると、それが良かったのかもしれません。忙しいと思っていましたが、全然違うことをやれていたので。それがなく、ずっとこの世界にいたらきつかったと思います。ファンミーティングが良い切り替えになりました」と振り返った。

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鈴木杏との再共演、印象に残るエピソード

鈴木杏とは映画『ジュブナイル』(2000)以来の共演となる。今回、夫婦を演じたことについて「その頃の杏さんは子どもだったので、急に大人になった感覚がありました。子どもの頃は知っていますが、現在に至るまで知らない期間があります。その変わり様が今回演じる夫婦の関係性にぴったりです。“ある事件”をきっかけにいろんなことが変わっていきますが、よく知っているはずの妻なのに知らない部分があるので、その感覚とリンクして、演じやすかったです」と語った。

撮影で印象に残っているエピソードとして「砂浜で妻と子どもと遊んでいるシーンが印象深く残っています。作品自体の撮影はすでに始まっていましたが、僕にとっては最初の撮影の日でした。楽しい作品が始まったと思ったら、スタッフの皆さんが『今日はスタッフも笑顔で、海を見て空を見て、こんな時間久々だ』というようなことをおっしゃっていて。そんなに大変な日々を送っていたのかなと疑問を持ちながら、『そうですよね、この作品だから』と言ったら、スタッフさんがボソボソと『もう今日で最後ですね』と話していて、『そんなに?』と疑問を持ちました。そうしたら、本当にあれが最後の笑顔でした」と明かした。

撮影の前後で考え方の変化については「見えてなかったところを考えるようになりました。ニュースを見ていると、その事件に裏で何人の人が関わっていて、どのような家族がいるのだろう、そこから裁判が始まって…と考えるようになりました。詳しくなったわけではないですが、お芝居を通して一時でも役を経験することになるので、中原という役を生きたことによって経験したものがあります。知ることができた分、今まで見ていたニュースとは違います。その先の悲しみも怒りも、今までとは違うように見えています」と述べた。

東野圭吾さんへの思い、見どころとメッセージ

原作者の東野圭吾さんが7月に他界されたことについて「街を歩いていた時に、東野さんのことをニュースで知りました。意味がわからなくて、『え、どういうこと!?』と驚き、足を止めて天を仰ぎました。お会いできていないですが、東野圭吾作品にどっぷり入って、作品が出来上がって。東野先生のことを思い、この作品に挑んでいるので、街でしばらく立ちすくんでいました。東野先生は素敵な作品をたくさん作り続けてこられました。そんな東野先生の作品のドラマ化の一部に自分がなれたことが本当にうれしいです。しっかりと認めてもらえるように、一生懸命挑みました」と語った。

東野さんの作品のイメージについては「今回の作品で言うと、描かなくても想像できる部分を描いています。そこにドキッとします。去った後に放たれる一言だとか。どのようなこと言うのかなんとなく想像がつきますが、その想像の先を見せられるので、鋭く突き刺さるような感覚を持ちます」と述べた。

本作の見どころについて「被害者、加害者、死刑制度など、いろいろな要素がありますが、何よりもこんな事件が起きてほしくない、悪いことなんてなくなれば一番いいのにと思ってしまいます。でも、人生には何が起こるかわからないです。見ていてしんどくなる作品ではあります。でも人は生きなければいけないです。辛いことがたくさん描かれてはいますが、そんな中でふとした夫婦の会話や、少しホッとできる瞬間を描きたかったと、瀬々監督はおっしゃっていました。どんなに苦しいことがあっても、生きていかなければいけない。そのためには、一息ついたり、空を見上げてふとした時に笑えたり、そんな瞬間もあるのだということも描いている作品なので、その部分にも注目してほしいです」と語った。

ファンへのメッセージとして「これまであまり見たことのない香取慎吾になっていると思います。重い作品であるというところが強調されがちですが、ミステリーとして、エンタメ作品として楽しんでもらいたいです。僕自身、本作に参加したことによって、大きく変わったところがたくさんあり、ニュースを見ていても今までの気持ちとは全然違う。見てくださる方にも、その変化があるかもしれません。そして、自分と向き合う時間を作ってくれる作品です。その時間を楽しんでもらいたいです」と呼びかけた。