無理をして頑張りすぎたせいで、夢が遠のこうとしている。まさに悪夢だった。
ストア派哲学は、逆境から生まれた
あのとき、ストア派哲学について知っていたらよかったのにと思う。これほど、逆境に役立つ哲学もないからだ。この哲学は、逆境から生まれたものなのだ。
私がストア派哲学に出会うのは、それから数年後のことだ。2002年当時の私がこの哲学を学んでいれば、たとえばストア派哲学の創始者であるゼノン(紀元前335~262年頃)の著作を読んでいたら、大きな助けになっただろう。キプロス島キティオン出身のフェニキア人で、裕福な商人だったゼノンは紀元前300年頃、財産を一挙に失った。アテネ近くの海で船が難破し、貴重な貨物が海に流されてしまったのだ。
失意のゼノンは、「アゴラ」と呼ばれる古代アテネの市場に居場所を見出した。当時、アゴラは単なる市場だけではなく、教育や哲学、討論の中心地でもあった。難破が転機となり、ゼノンの人生には新たな道が切り開かれた。彼は、哲学に身を捧げることになったのだ。
ゼノンにとっての第一歩は、著名な哲学者の著作を読むことだった。キュニコス派(犬儒派)の哲学者のソクラテス(紀元前469~399年)に師事し、当時としては急進的であった男女平等といった思想などを学んだが、何よりも影響を受けたのは、ソクラテスが主張した実践哲学だった。やがてゼノンは、アゴラの脇にある柱廊(ストア)で哲学の学校を開いた。財産を失った彼は、新たな人生の可能性を模索していた。彼自身の言葉を借りれば、目指したのは「少ない荷物で哲学を実践すること」だった。「難破を経験したことで、むしろ今私は良い旅をしている」と彼は語っている。逆境は、ストア派哲学の源泉なのである。
ソクラテスは、その鋭い主張によって世の中に悪影響を与えたとされ、毒を飲むよう命じられた。一方のゼノンは、若者を指導し、他者の長所を引き出す能力によって高く評価され、アテネの人々から大きな尊敬を集めた。ゼノンが礎を築いたストア派の思想は、その死後、弟子たちによってギリシャを超えて広められていった。



