18世紀以前の文献に記録された韓国の怪物をまとめた大辞典『韓国怪物大全』(クァク・ジェシク著、翔泳社)が刊行された。著者は自身も作家であり、参考資料に朝鮮時代の古い物語集を手に入れのめり込み、怪物をネットで紹介するようになる。そこから11年。遂に完成した。
トッケビの正体
トッケビはご存じの方も多いだろう。木や古いものに憑いた霊的存在、日本の付喪神のような精霊というのが一般的。だが日本の赤鬼などとは違い、「漠然と謎に包まれた存在」を指すのに使われる呼び名だとか。
怪物の多様な姿
トッケビだけではない。怪物は時に「正確にどのような姿をしているかは不明」とある。イ・ガンフンの青黒二色の版画風怪物画は、巧みな紹介文と相まって読者の色彩感覚、空想力を強かに刺激する。儒教の「理屈で説明できないものを語るべからず」という思想が怪物を無形化したのか。怪物によっては恐怖する者には死を与え、克服できる者からは立ち去り、対話することもあるという。
夏の読書に
奇想天外な隣国の逸話を楽しむもよし、我が精神と見合わせるもよし。稀少な怪物大全を夏の思い出に。朴美暻監修、高松彩乃訳。(6985円)
長塚圭史(ながつか・けいし)は1975年生まれ。劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」を主宰し、劇作家、演出家、俳優として幅広く活躍している。2021年からはKAAT神奈川芸術劇場(横浜市)の芸術監督も務める。



