コラムニストの河崎環氏が、石戸諭氏の著書『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書、本体960円+税)を書評している。同書は、福島第一原発を扱ったルポで知られる石戸氏が、これまで各所で発表してきた「ややこしい社会現象の中心にいる、ややこしい人たち」のルポを大幅に加筆し、一冊にまとめたものだ。
「トリックスター」の本来の意味
石戸氏は本書で、「トリックスター」という言葉について、広辞苑での最初の定義が「詐欺師。ぺてん師」であると念を押す。エスタブリッシュメントや正統派の正義の味方を信じなくなった現代において、この言葉は肯定的な、ときに礼賛的な空気さえ纏っているが、その本来の意味に立ち返る視点を提示している。
描かれる「嫌われ者」たち
石戸氏が肉薄する「嫌われ者」とは、玉川徹、西野亮廣、ガーシー、吉村洋文、そして山本太郎。ここ10年を代表する、メディアや選挙の台風の目となった男たちだ。彼らの共通点は、定義はさまざまだが「既得権益」への対立姿勢、やがてそれ自体が目的化していく部分もあり、世間を引っかき回し、コアな支持者を惹きつける一方で、強火のアンチも生む挑戦的な言動にある。
国内外で選挙が続き、民主主義の劣化を実感させられた2024年を背景に、広義のポピュリズムを操って注目を浴び、何らかの利益を得る人物たちを描き出し、彼らの言動の背景と理由を分析、解説していく過程は説得力がある。



