文系大学院の博士課程を修了した男性が、不安定な非常勤講師として月8万円の収入に甘んじ、ワンオペ育児に追われる妻から罵倒される日々。追い詰められた末に「即日即金1日5万円」を謳う闇バイトに手を出すまでを描いたドキュメンタリーコミック『高学歴難民』(秋田書店)の一部が公開され、反響を呼んでいる。
博士号を持ちながら「コマ切れの非常勤講師」、月収8万円の現実
主人公は、文系大学院で博士課程を修了した34歳の男性。しかし、待っていたのは正規の職ではなく、複数の大学を掛け持ちする「コマ切れの非常勤講師」という立場だった。月収はわずか8万円。妻の収入に頼って生計を立てていたが、第一子の誕生で家計は完全に崩壊する。
「高学歴でありながら社会のレールから外れ、誰にも言えない困窮に喘ぐ人々がいる」と、本作の作者である阿部恭子氏(NPO法人World Open Heart理事長)と漫画家ブル氏は語る。この作品は、そうした知られざる実態をリアルに描いたドキュメンタリーコミックだ。
ワンオペ育児の妻からの罵倒、「お前の給料なんて雀の涙」
主人公は育児や家事にほとんど参加できず、妻はワンオペ育児で疲弊。ある日、妻から「お前の給料なんて雀の涙だ」「博士号があっても役に立たない」と罵倒される。彼は自己肯定感を失い、藁にもすがる思いで「即日即金1日5万円」を謳う闇バイトの広告をタップする。
この作品は、高学歴でありながら非正規雇用や低収入に苦しむ「高学歴難民」の実情を浮き彫りにしている。博士課程修了者の就職難や、非常勤講師の不安定な処遇は長年問題視されてきたが、本作はその深刻さを生々しく描き出している。
闇バイトのリスクと現実、SNSで拡散される募集
闇バイトは「即日即金」「高額報酬」を謳い、SNSや掲示板で頻繁に募集されている。しかし、実際には詐欺や犯罪の片棒を担がされるケースが後を絶たない。警察庁の統計によると、2025年には闇バイト関連の摘発件数が過去最多を記録。多くの若年層が経済的困窮から手を出し、取り返しのつかない結果を招いている。
本作の主人公も、妻の罵倒と家計の逼迫から、リスクを承知で闇バイトに応募する。作中では、彼が「これで生活が楽になる」と期待する一方、不安と罪悪感に苛まれる様子が描かれている。
高学歴難民の増加と社会の課題
文部科学省の調査によれば、博士課程修了者のうち正規の職に就く割合は約6割にとどまり、非常勤講師やポスドクとして不安定な立場にある者は少なくない。特に人文科学系ではその傾向が顕著で、社会のニーズとアカデミアの供給のミスマッチが指摘されている。
阿部恭子氏は「高学歴であることがかえって足かせとなり、プライドや周囲の目から相談できない人も多い」とコメント。本作はそうした人々に寄り添い、社会に問題提起をする意図で制作された。
作品情報と反響
『高学歴難民』は秋田書店より刊行中で、Amazonなどで購入可能。今回公開された26ページ分は無料で読むことができ、ネット上では「博士号を取っても報われない現実が辛い」「自分のことのように共感した」といった声が上がっている。



