『ファルスについて 偏愛的作家論』(皓星社、3080円)は、松山巖氏が編んだ、大正・昭和の文学史において通常の記述ではメジャーであってもメインには位置づけられない作家たちをめぐる文章を集めた一冊だ。
人柄が浮かび上がる追悼文
本書には、著者・松山巖氏の生まれ育った町の名を聞いてにやりと笑い、「お前さん、長屋の餓鬼だな」と言った種村季弘氏や、本紙の読書委員会の席上で「これは日本語ですか」と毒舌をふるう川村二郎氏の追悼文が収められている。それぞれの人柄が文章の奥からくっきりと浮かびあがる。
路地を思わせる語り口
収録されるのは、幸田露伴・内田百閒から、夢野久作・澁澤龍彦、さらに久世光彦・須賀敦子に至る文学者たち。どの人物の作品も、巧みな語り口の裏側に自由な感性が生きて働いていることが伝わってくる。
松山氏は、住んできた町・東京愛宕について、植木鉢やら箱やら、いろいろなモノが並び、人々が立ち話をしたりする路地と語る。本書に収められた各篇もまた、あたかもそこで一つのモノに視線をこらし、ばったり会った近所の人と会話するようにして綴られている。そして文体には、間違いなく「日本語」が息づいている。



