選考会が本日開催、注目の候補作
第175回芥川賞・直木賞の選考会が15日午後4時から都内で開かれます。候補作はどれもいま読むべき力作ばかり。書評家の杉江松恋さんに読みどころを語ってもらいました。
芥川賞候補:現代社会を映す5作品
芥川賞候補の5作は「すべて読むと、今の現代の日本社会が俯瞰できる」といいます。以下、各作品の詳細です。
小砂川チト「ゾンビ回収婦」
現実の世界でリストラに遭い、夫も家から離れてしまった女性が、夫のVRゴーグルを手に仮想世界に入っていく。ゲームには次々とゾンビが現れ、彼女はそれを片付ける「ゾンビ回収婦」になった。支配人に認められたいと、必死に働き始める。
「彼女は会社に尽くす生き方しかできないものだから、仮想世界でも同じようにする。そして仮想世界がもとの世界よりも現実感があるものに思えてくるんです。いま生成AIの使い方が問題になっています。人間らしい生き方とは何かという問いが、ゾンビシューティングゲームのなかで語られていくのがすごく面白い」と杉江氏。
鈴木涼美「悪い血」
妊娠しているらしいと気づいた女性が、検査のために採血を受ける。彼女は自分を縛る過去を抱えている。性風俗産業との関わりや性的搾取の傷が記憶された「血」を、彼女は病院から取り戻そうとする。
「現代から過去の世界へのスライドの仕方がすごく面白いですね。フラッシュバックというのともちょっと違って、現在と過去が地続きになってるような形。現在と過去がつづれ織りみたいに書かれていく技巧が面白い。女性が性的に搾取されているという小説でもあるので、ジェンダーの問題に関心がある人にも響くと思います」と杉江氏。
仁科斂「丹心(まごころ)」
建築を教える大学教員のもとに、中国・寧波の廃虚マンションを美術館にするプロジェクトの依頼が舞い込む。大学教員は理想を掲げるものの、現実は居住者の立ち退き交渉に暴力団を使っていたりする。「まごころ」を持っているのは誰なのか――。
「候補作のなかでは一番『社会派』的な作品。国際的な開発プロジェクトをめぐる倫理と現実のギャップが描かれ、現代のグローバル社会における道徳的ジレンマを考えさせられる」と杉江氏は評する。
直木賞候補も充実
直木賞候補作についても、杉江氏は「エンターテインメント性と文学性を兼ね備えた作品が揃っている」とコメント。詳細は有料記事にて。
選考結果は本日夕方に発表予定。注目の受賞作が決まる。



