小説家の東野圭吾さんが、7月23日に死去した。享年68歳。遺作は代表作「ガリレオ」シリーズ『永遠の記憶』だった。東野氏の著作を全て読んできたミステリ評論家の千街晶之さんは「遺作を読んで、東野作品らしい仕掛けに驚いた。東野さんが遺作に込めた想いも感じた」という。
ベストセラー作家への道のり
1958年、大阪市に生まれた著者は、『放課後』(1985年)で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家デビューを果たした。その後、『秘密』(1998年)で第52回日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』(2005年)で第134回直木賞および第6回本格ミステリ大賞、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2012年)で第7回中央公論文芸賞、『夢幻花』(2013年)で第26回柴田錬三郎賞、『祈りの幕が下りる時』(2013年)で第48回吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞した。
作品ではなく個人に与えられる賞としては、野間出版文化賞、菊池寛賞、日本ミステリー文学大賞を受賞し、紫綬褒章、紺綬褒章も受章している。2009年から2013年までは日本推理作家協会の理事長を務めた。著作の国内累計発行部数は2023年の時点で1億部を突破した桁外れのベストセラー作家であり、その作品群は海外にも翻訳され、特に韓国や中国などで圧倒的な人気を誇っていた。
デビューからブレークまで
ただし、作家としての道のりは最初から順調だったわけではない。デビュー翌年には専業作家となったが、刊行された時点では増刷されない作品も多く、文学賞の候補にノミネートされながらなかなか受賞の機会に恵まれない時期が続いた。
しかし、『名探偵の掟』や『どちらかが彼女を殺した』などを発表した1996年あたりから注目度を増し、1998年の『秘密』でついに大ブレークを果たした。その後はベストセラー作家としての歩みを確立し、凝りに凝った謎解きミステリから、人情味を重視した小説、心理サスペンス、コミカルな作品、ファンタジー的設定を採り入れたものまで、その作風は幅広かった。後世に残る二大代表作は『白夜行』(1999年)と『容疑者Xの献身』とされる。
遺作『永遠の記憶』の衝撃
訃報が公表されたのは7月27日のことだった。死因は大腸がんで、数年前から闘病を続けていたという。27日の夜、店頭に並ぶより一足先に手元に届いていた『永遠の記憶』――図らずも著者の遺作となった作品に目を通して、千街氏はその内容に、訃報から受けたのとほぼ同等の大きな衝撃を受けたという。ある意味、この上なく遺作に相応しい内容であり、大変な問題作でもあると語る。
その衝撃の内容について、千街氏は「前半を読んだだけでは分からない、とんでもないサプライズがある」と述べている。東野氏が遺作に込めた想いとは何だったのか。詳細は記事の後半で語られる。



