江戸時代の俳人・松尾芭蕉(1644~94年)の生誕地である三重県伊賀市の教諭らが、子どもたちに俳句への親しみを持ってもらおうとカードゲーム「THE kukai(句会)」を製作した。今秋以降、紀行文「おくのほそ道」で芭蕉がたどったルートを中心に、各地で体験会を開く。
言葉を選ぶ楽しさを体験
ゲームは、「しゃぼん玉 さいごは〇〇に 触れて消え」など17音のうち2音が除かれた「お題カード」40枚と、「うた」「かべ」などの「2音カード」50枚で構成される。お題カードのうち5枚は芭蕉の句で、残りはオリジナル作品だ。
参加者は3枚ずつ配られた2音カードの中から、お題カードの「〇〇」に合うと思うものを出し、その中から句として最も気に入ったものへ投票する。正解を当てるのではなく、言葉を選ぶ俳句の楽しさを知ってもらうことが目的だ。
体験会での反響
7月下旬に伊賀市で開かれた体験会では、芭蕉の句を基にした「閑(しず)かさや 〇〇にしみ入る 蝉(せみ)の声」というお題が出された。元の句に入る言葉は「いわ(岩)」だが、参加した市立上野北小5年の児童(10)は「はね」のカードを出し、最も好評を得た。「カードを選ぶだけで句を作ることができ、楽しい」と笑顔を見せた。
小1の娘と参加した会社員(38)は「俳句は堅苦しい言葉を選ぶものだと思っていた。カードで言葉を表すことができるのは簡単で、想像も膨らむ」と話した。
「せんせいの句会」の取り組み
ゲームを作ったのは、伊賀地域(伊賀、名張両市)の小中学校の教諭らが5年前に結成した「せんせいの句会」。現在は約20人が所属する。学校で習う俳句は著名な俳人の作品が多く、授業では五七五や季語などのルールを教えることが重視される。伊賀市では小中学校の夏休みの宿題として定番だが、子どもたちには「堅苦しい」「ハードルが高い」とのイメージを持たれがちだという。
同会代表の森永侑樹教諭(34)は「自身の体験や感動を、たった17音で表現する楽しさを知ってほしい。上手につくる必要はない」と語る。
初心者でも挿入する単語によって印象が変わる俳句の面白さを体験できるよう、2年前に「THE kukai」を考案。クラウドファンディングで約200万円を集め、伊賀地域の小中学校に約400セットを寄贈し、これまで約50回の体験会を開いてきた。
「全国行脚」へ
体験会では「家庭でも遊びたい」「地域で活用したい」などの感想が寄せられた。全国を行脚して俳句を広めた芭蕉にならい、伊賀地域以外にもゲームの魅力を広めようと「全国行脚」を思い立った。
今年6~8月、クラウドファンディングで新たに集めた約150万円を使い、500セットを追加で作成。東京から出発して東北や北陸を回り、岐阜県大垣市に至る「おくのほそ道」のルートを中心に巡回し、体験会を開くことを企画した。10月12日に伊賀市で開く出発式で、最初の開催地を公表する。巡回先ではゲームの販売も行う。
森永教諭は「芭蕉が各地を旅したように、私たちも俳句やゲームを広げる旅に出たい。いつか伊賀で『THE kukai』の全国大会を開くのが夢」と話す。