読書の秋が訪れました。紙の本は、読むことを楽しむのはもちろん、飾って表紙を眺めたり、ページをめくったり、未読の本を積んだりと、「もの」として所有すること自体も楽しめます。今回は電子書籍とはひと味違う、持つ喜びを味わえる本を紹介します。
夏目漱石「こころ」の約40種類を収集
1冊目は夏目漱石の「こころ」です。初めて読んだのは大学生の頃。同じ女性を好きになった親友を裏切り、死に追いやった過去を背負った「先生」と、彼を慕う「私」の物語です。友人を思う心と、自分が一番かわいいという気持ちの間の葛藤は、いつの時代の人にも共通して起こりうるもので、今も全く古さを感じさせない大好きな作品です。
「こころ」は1914年に上梓されてから110年以上にわたり、多くの出版社が刊行しています。期間限定のカバーをつけたものが発売されることもあり、全てを手に入れたくなって、いろいろな「こころ」を集めてきました。
漱石自身が装丁を手がけた初版の復刻版、今年亡くなった愛知出身のブックデザイナー祖父江慎さんによる刊行100年記念の特装版、漫画「デスノート」の作画者・小畑健さんが表紙を描いたものなど、手元には約40種類があります。手ぬぐい店「かまわぬ」と連携した和柄の角川文庫版や、毎年白い表紙ながら少しずつ色調や装丁が変わる新潮文庫の限定カバー版は現在も当店で販売しています。
生きた昆虫を撮影した図鑑
2冊目は「学研の図鑑LIVE 昆虫 新版」です。この図鑑には約2800種の昆虫の写真が収録されていますが、掲載されているのは標本ではなく、すべて生きたまま撮影された虫たちです。
総監修の昆虫学者・丸山宗利さんを筆頭に専門家たちがチームを組み、全国で昆虫を採集しては、生きたまま白い背景で撮影。掲載されたのは、約7000種の写真の中から厳選されたものだそうです。
丸山さんの著書「昆虫学者、奇跡の図鑑を作る」(幻冬舎)によると、翅の鱗粉がすぐに取れてしまうチョウの撮影を担当したメンバーは、幼虫から飼育して羽化するのを待って撮影したとのこと。表紙にも、カブトムシが角で抱え込んだノコギリクワガタの背面がきれいに見える奇跡の一瞬を捉えた迫力ある写真が使われるなど、チームの苦労が1冊に詰まっています。
生きている昆虫たちは美しくて格好良く、またかわいらしい。この本があれば、そんな昆虫たちが全て手に入ります。図鑑というと、昔は子どものためのものというイメージも強かったと思いますが、昆虫好きの大人にも、ぜひ手元に置いていただきたい1冊です。
本の楽しみ方は人それぞれ。皆さんはどんな楽しみ方をされていますか。
丸善四日市店は三重県四日市市諏訪栄町7の34、近鉄百貨店四日市店地下1階。文芸書や専門書、実用書など約30万冊をそろえ、営業時間は午前10時~午後8時。



