KDDIが2026年8月7日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)決算では、モバイル事業の主要な指標がそろって改善した。スマートフォンの解約率は1.17%で前年同期から0.06ポイント低下し、契約数も39万増の3330万契約となっている。
解約率は1.48%から1.17%へ
KDDIは2025年6月にauバリュープランを導入し、8月には使い放題MAX+やauマネ活プラン+といった既存プランの月額料金を引き上げた。値上げから1年がたった決算になる。
もっとも、この1年が平たんだったわけではない。四半期ごとの解約率は1.23%(2025年4~6月)、1.21%(7~9月)、1.23%(10~12月)と推移した後、直前の2026年1~3月は1.48%まで跳ね上がった。進学や就職に伴う乗り換えが増える時期とはいえ、100人のうち1.5人が毎月離れていく水準だ。
そこから4~6月は1.17%に戻した。田中氏は「販促競争からの撤退という言葉でいうほど容易ではない大きな構造改革を、経営の最前線の舵取り強さをもって実行した」と語り、解約率の低下と契約数の増加を両立できた点を強調した。
モバイルARPUは4400円で160円(3.8%)の増加となった。料金改定に加えて、auバリュープランやコミコミプランバリューといった上位プランの契約者が増えたことが要因だという。端末値引きで新規契約を取りに行くのではなく、長く使ってもらって収益を積み上げるLTV(顧客生涯価値)重視の方向性が、数字に現れた形になる。
au・UQ mobile・povoのすみ分けに成功
メインブランドのauでは、auからUQ mobileへ移る契約とUQ mobileからauへ移る契約の差し引きが、前年同期から17万件改善した。auに留まる顧客と、UQ mobileからauに上がってくる顧客が増えたためだという。
その土台にあるのが通信品質だ。5G SAの人口カバー率は90%を超え(2026年3月末時点)、体感品質を高める「au 5G Fast Lane」の累計利用者数は310万人を突破した。au Starlink Directは海外ローミングを米国とカナダで開始し、年内に4カ国へ拡大する予定だ。
UQ mobileは6月25日に「UQコミコミおトク割」を始めた。月35GBのコミコミプランバリューにau PAY ゴールドカードの特典を組み合わせたもので、施策開始の前後を比べるとコミコミプランバリューの選択数は約2.1倍、ゴールドカードの選択率は約1.6倍になった。
値上げの直後に割引を導入したことについて質問が出ると、田中氏は「ゴールドカードとの付帯率を高めるための1つの手法」と説明した。ahamoが8月から「データ増量おためしキャンペーン」として期間限定で40GBに増量したことへの対抗を問われた場面では、価格やデータ容量だけでなく、品質やサポートも含めた「全体の価値をもって十分対抗していける」と答えている。
povoは新トッピングの投入後、他社からの乗り換えが約4.4倍に増えた。ローソンなどで販売するギガチャージカードの販売枚数も約4.3倍だ。田中氏によると、auやUQ mobileからpovoへ移る数は増えておらず、ブランドごとの役割が分かれているという。
3つを並べると、値上げしてもユーザーが減らなかった理由が見えてくる。auは通信品質で引き留め、UQ mobileは金融特典を重ねて単価を上げ、povoは他社からの流入を受け止める。値引きで新規契約を奪い合うのではなく、どの入り口から入った顧客もグループ内で循環させる配置だ。田中氏が繰り返す「販促競争からの撤退」は、この形を指している。
楽天ローミング、ルーラルエリアは期間限定で継続
質疑応答では楽天モバイルへのローミングに質問が集中した。田中氏は現行契約を2026年9月で終了する方針を改めて示し、7年間で楽天モバイルのエリアが拡大したことから「当社としては役割を十分に果たせた」と説明。一部のルーラルエリアに限り、期間を限定して協力を続けるという。
背景にあるのは「想定外のエリアからの想定以上のトラフィック」だ。2023年の協定更新で都市部の繁華街や地下街もローミング対象に加わり、自社ユーザーが使う複雑な地域の容量を割く形になっていた。契約終了によって「今まで以上にau、UQ mobile、povoのお客さまの品質向上のためにネットワークリソースを割り当てる」とした。
楽天モバイルのローミングは「9月末をもって予定通りに終了」。狙いは「品質改善」だが、「ルーラル限定で期限を切った新契約」の可能性も示唆した。
端末価格の高騰にどう向き合うか
デバイス関連収入は601億円で49億円(8.9%)の増加となった。出荷台数はほぼ前年並みで、伸びを支えたのは修理・補償サービスとスマートフォン周辺商品だ。
メモリの高騰で端末価格が上がり続ける中、田中氏は「お客さまの買い替えの負担は重くなってきている」と認める。その上で、修理や補償を使って端末を長く使ったり、中古という選択肢が広がったりすることで「デバイス関連収入はまだまだ伸びしろがある」との見方を示した。長く使われた端末は下取り価格も高くなるとみる。
ミリ波のような新機能を搭載した端末を欲しい気持ちは変わらないともした。加えて挙げたのが周辺機器で、そこにAI機能が載ることで「今までと違う体感」を届けられる。具体的な製品名は出なかったが、AIグラスのようなデバイスが念頭にあるとみられる。
周辺機器そのものがセルラー通信を担うには「まだまだ時間はかかる」ため、当面はWi-FiやBluetoothでスマートフォンにつながぐ形が続くとした。
7日発売のGalaxyの折りたたみスマートフォンについて聞かれた田中氏は、自身が初代Galaxy Z Flipの発表会に立ち、「スマホを折りたたもう」というキャッチコピーで沸いたことを振り返った。その上で「新しい形、新しいワクワク感はお客さまに届け続けたい」と述べ、価格が高騰する中では「お求めしやすいというのが本当はベスト」だとして届け方を工夫する考えを示した。
業績は増収増益、ただし通期予想は据え置き
売上高は前年同期比5.1%増の1兆4873億円、調整後営業利益は21.1%増の3143億円だった。田中氏は「プラス21%という力強いモメンタムを確立し、新中期経営戦略での盤石なスタートを切る第1四半期になった」と語った。
KDDIは、今期から事業の区分を3つに組み替えている。通信の本業にあたるのが「テレコムコア」、金融やエネルギー、デバイスなど個人向けの周辺事業を束ねたのが「パーソナルグロース」、法人向けのAIやデータセンターを集めたのが「ビジネスグロース」だ。増益をけん引したのはテレコムコアの344億円増で、うちモバイル通信収入が180億円を占めた。
もっとも、通期予想の調整後営業利益1兆2100億円は据え置きだ。通期では前期比5.0%増の計画であり、1Qの21.1%増との落差は大きい。増益幅548億円のうち124億円はセグメントに馴染まない「その他」で、マンマー事業のリース見直し影響を含む。田中氏は下期に戦略的なコストを投じる考えを示しており、1Qの成果がそのまま通年に及ぶわけではない。



