Appleが、中国の半導体大手CXMT(長鑫存儲技術)からのメモリ調達を模索し、米トランプ政権に働きかけている。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が6月26日(現地時間)、関係者の話として報じ、米ブルームバーグやロイター通信も追って伝えた。Appleはコメントを控え、ホワイトハウスはFTの取材に応じなかった。
CXMTとは何か?なぜAppleは注目するのか
CXMTは中国最大のDRAMメーカーである。DRAMはスマートフォンやPCで作業用データを一時的に記憶する半導体で、iPhoneやMac、iPadなど大半のApple製品に欠かせない部品だ。FTによると、Appleは少なくとも5月以降、米商務省や政権内の関係者に対し、CXMTからの調達を認めるよう働きかけてきたという。
もっとも、AppleはCXMTからの調達を現時点で禁じられているわけではない。CXMTは国防総省が中国軍との関連を指摘する「1260H」リストに載るが、これは国防総省自身の調達を制限するもので、民間企業の取引そのものを禁じる効力はない。
Appleが求めるのは「エンティティリスト」追加回避の保証
Appleが求めているのは、商取引を厳しく制限する商務省の「エンティティリスト」に、CXMTを将来的に追加しないという保証だとFTは伝えている。米企業がエンティティリスト掲載企業に製品や技術を輸出するには許可が必要で、その許可は下りにくい。Appleは規制の不確実性を避けた上で調達関係を築きたい狙いとみられる。
背景にあるのは、深刻なメモリ不足と価格の高騰だ。韓国SamsungおよびSK hynix、米Micronといった大手が、生成AI向けデータセンターで需要が沸騰する広帯域メモリ(HBM)に生産能力を振り向けた結果、一般向けのメモリが品薄となり、価格が押し上げられている。Appleは6月25日、こうした半導体の価格高騰を理由にMacやiPadなどを値上げしたばかりで、新たな調達先の確保を迫られている。
過去にも中国メモリ調達の計画があったが断念
Appleが中国のメモリ大手に接近するのは初めてではない。2022年には、中国向けiPhoneに使うNAND型フラッシュメモリをYMTCから調達する計画を進めていた。だがバイデン政権下で対中輸出規制が強化され、米議会からも安全保障上の懸念が示されたことから、Appleは計画を断念。YMTCはその後の年末にエンティティリストへの追加が決まった。
今回のDRAM調達計画も、同様の政治的リスクをはらむ。実際、米下院の中国問題特別委員会のジョン・ムーレナー委員長は、Appleが中国軍関連企業と組むのは「重大な誤りだ」とFTに述べ、議会内には反対論もある。
アナリストの見解:2027年に向けた供給ギャップへの備え
Apple製品のサプライチェーンに詳しいアナリスト、Ming-Chi Kuo氏は、自身のXへの投稿で、今回の動きを「27年に向けてメモリの供給ギャップが拡大し続けることへの備えと分析する」と述べた。
同氏によれば、26年に一般向け電子機器に充てるメモリ生産能力の15~20%が、27年にはデータセンター向けに回る見込みで、Appleは新たな供給源の確保を迫られているという。ただし、仮にロビー活動が成功してCXMTからDRAMを調達できても、コスト削減や供給ギャップの解消に直結するわけではないと指摘している。



