室蘭工業大学(室蘭工大)は2024年6月17日、高速飛行する小型無人ジェット機「オオワシ」の離陸から着陸までの完全自動飛行に成功したと発表した。この成果は、同大学航空宇宙機システム研究センターの溝端一秀准教授、樋口健名誉教授、江口光助教、今井良二教授、湊亮二郎准教授、中田大将准教授、畠中和明准教授らの研究チームによるもの。
固定翼機の自動操縦、大学機関で初の完全自動化
マルチコプターに代表される4発以上のローターを備えたドローンは、操縦の容易性から広く利用されているが、空気抵抗の大きな形状のため、長距離の低燃費飛行には向いていない。一方、固定翼機は技術的に自動操縦の難易度が高いものの、空気抵抗が小さく、より高速で長距離を移動するのに適している。特に無人ジェット機での完全自動操縦は、一部の民間企業では成功しているが、国内の大学機関ではまだ実現されていなかったという。
室蘭工大は、航空宇宙機システム研究センターに所属する教員や学生を中心に、「大気中を高速度で飛行する基盤技術」に関する研究開発を実施してきた。同大学が有する約1.5ヘクタールの白老(しらおい)実験場を活用し、これまで飛行実験や屋外エンジン試験などを頻繁に実施し、ノウハウを確立。2017年にはプロペラ機での自動操縦に成功している。
「オオワシ」の機体設計と開発経緯
「オオワシ」は超音速での飛行を念頭に設計され、翼形状として「クランクト・アロー翼」を採用。風洞実験や車載走行試験による空気力学特性の把握や機体構造へのフィードバックを続け、着陸脚、燃料タンク、インテークなどの設計が進められた。現行モデルの飛行機体の製作と飛行試験プロジェクトは2018年ごろから始まり、改良が重ねられてきた。
最終的に「オオワシ」は、より強力なジェットエンジンあるいはロケットエンジンを搭載することで超音速飛行も可能な機体設計だが、その場合に最も困難なのが離着陸時の制御だという。今回の試験では自動操縦での離着陸に成功し、その困難なマイルストーンを達成した。
機体製作と自動制御システムの詳細
機体製作は当初、本州の業者に依頼していたが、次第に内製率を高め、同大学の航空宇宙工学コースの有志学生チームによって精度の高い組み立てノウハウが確立された。操縦精度を決める舵面のエレベーター軸などは、地元室蘭の永澤機械に依頼し、0.01mmの精度で製作された。
自動制御においては、これまで道内の日本航空学園の白老滑空場や朝日航空の鹿部飛行場などで、手動操縦を組み合わせて培ってきた運用ノウハウ・操縦性をベースに発展させた。後継となる新たな自動制御システムが2023年度に構築され、高速飛行での安定制御を可能とする制御システムが完成した。
高度情報はGPSや気圧センサに加え、最終アプローチではレーザー距離計を併用することにより精度の高い着陸を実現。テレメトリには920MHz帯の通信機器を利用し、これらの搭載機器を含め、1機あたり約100万円のコストで製作された。
災害対応への応用と今後の展望
高速で航続距離の長い固定翼無人機は、火山噴火時や水難事故などの災害時に広域観測・調査において有用と期待されている。室蘭工大は今後の目視外飛行の実現に向け、機体の大型化と燃料搭載量の増加、長距離無線伝送技術の実装も進めていく方針。
「オオワシ」の現在の最高速度は時速約250kmだが、高出力のジェットエンジンやロケットエンジンを搭載すれば超音速飛行も可能な機体形状であり、極めて高速での初動能力を有する。固定翼無人機の運用としては、高速の初動機に続いて、ホバリング・垂直離着陸が可能なVTOL固定翼機の編隊を現場に送るなどのハイ・ローミックスでの運用形態が考えられるとしている。
室蘭工大の無人自動飛行技術の開発において、「オオワシ」はフラッグシップに位置づけられている。現在は無人のVTOL固定翼機の開発も進めており、積雪深度に対するレーザー計測などの実証研究も行い、さまざまな用途に合わせた多彩な無人機活用の研究を進めている。



