モトローラが初めて開発した縦開きのフォルダブルスマートフォン「motorola razr fold」が、日本市場に投入された。折りたたみ式ディスプレイを備え、閉じると通常のスマートフォンとして使える21:9比率の約6.1インチディスプレイを搭載。開くと約8.1インチの大画面を利用できる。
日本版はFeliCaに対応し、おサイフケータイにも対応。キャリアでの取り扱いはないが、IIJとタッグを組むことでMNPでの10万円割引も実現した。
モトローラ・モビリティ・ジャパンの開発事業部長である嶋田正史氏に、開発の経緯や日本投入を決めた理由を聞いた。
なぜ今、縦開きなのか
意外なことに、razr foldはこれだけフォルダブルスマホを作ってきたモトローラとして初めての縦開きだ。なぜ今、縦開きなのか。嶋田氏は「フィーチャーフォンのrazrからの系譜もあり、モトローラはこれまでスマホのrazrもフリップ型で展開してきました。閉じるとコンパクトで、開くと大画面ということをアピールしています。日本では、お求めやすいフリップ型としてプレゼンスを築いてきました。一方で、最近では縦開きのフォールド型へのニーズも含め、折りたたみへの要望が多様化しています」と説明する。
フォールド型は閉じた状態だと普通のスマホで、開くとさらに大画面になる。もちろん、ガラケーを経験していない若い人にはフリップ型が小さくてかわいいという意見もあるが、フォールド型だと新しいユースケースを提案でき、受け入れられやすい。持ち歩くものを減らしたいというニーズにも応えられる。
ノートPCやタブレットとスマホを2台持つ必要なく、1台でタブレットのようなプロダクティブな作業にも、エンタメコンテンツを楽しむのにも使える。こうした総合的なメリットを考え、モトローラとしてフォールド型も選択肢に入れる必要があるという判断に至ったという。
「最高峰」をフォルダブルにも搭載
機能面やサイズ感のバランスなどを見ると、他社のフォールド型を研究し尽くしている印象がある。弱点を潰しにきたというような。嶋田氏は「初めてフォールド型を出すにあたり、キャッチコピーは『最高峰』にしています。最高峰を目指したのが、出発点だったからです。他社のものを見ていると、価値と大画面のバランスを取るためか、少しカメラのスペックが抑え気味です。バッテリー容量もそこまで大きくない。それに対し、われわれは今持っている最高のカメラを入れています」と語る。
このカメラは、評価機関「DXOMARK」でゴールドカメラのレベルをもらった性能のもので、海外で販売している「signature」にもまったく同じものが入っている。つまり、バータイプのスマホの最高峰を、フォルダブルにも入れたということだ。バッテリーは、シリコンアノードのテクノロジーを適用して、大容量化を図っている。
フォルダブルスマホの場合、バッテリーを2つに分割しなければならず、その中で厚みを抑えているのでどうしても容量が少なくなりがちだが、この技術で大容量化を達成できた。
折り目の目立たないディスプレイ
また、フォルダブルには興味はあるが、耐久性が問題であるという声はよく聞く。こうした声は、特に持っていない方から聞くことが多い。そこにもこだわった。具体的には、ヒンジの部分に、今までフリップでも採用してきたしずく型ヒンジを採用している。折りたたんだときに、ティアドロップのようにたわむ構造で、それを突き詰めて折り目を目立たなくしている。
素材には、剛性が高く、車にも使う2000MPa級の金型を使い、メインディスプレイの後ろにはチタンのプレートも入れている。それで折りたたんだときの応力のかかり具合を分散し、耐久性や剛性を高めている。もう1つはアウトディスプレイで、こちらにはコーニングの「Gorilla Glass Ceramic 3」を採用している。こちらは、コンクリートに2mの高さから落としても割れません。1mの高さから20回連続で落としても割れないという試験も実施している。
開いたときの厚みが4.55mm。最薄ではあるが、最初のフォールド型でここまで薄くできたのには驚いた。嶋田氏は「端末が厚い要素にはバッテリーやディスプレイ、後はヒンジの構造がありますが、ディスプレイのチタンプレートは薄いもので、その上には極薄のガラスを載せています。全体的に、薄さを妨げない設定になっています」と説明する。
ヒンジを小型化できたのは、これまでのrazrのノウハウが生きているからだ。嶋田氏は「はい。フリップで培ってきたノウハウを入れています。折り目が目立たないしずく型ヒンジを搭載しながら、厚みは抑えています。本来、しずく型は空間が必要になるのである程度厚くなりがちですが、そこはバランスを取って薄さをキープしました」と語る。
しかも、今回、ペン入力にも対応している。嶋田氏は「対応するにあたり、ディスプレイの剛性を高めています。また、ペン入力はアウトディスプレイ、メインディスプレイの両方に対応しています。アクティブスタイラスで4096段階の筆圧検知も可能なものです」と話す。
FeliCa搭載の理由
日本版はFeliCaが搭載されおサイフケータイに対応している。オープンマーケットモデルだけであれば、この価格だと台数も少ないと思うが、なぜここまでカスタマイズしたのか。嶋田氏は「SIMフリーのみという形で『razr 40 ultra』を出したときにはおサイフケータイを搭載していませんでした。ただ、『これにおサイフケータイがあれば買ったのに』という声がものすごく多かった。日本でメインのスマートフォンとして使うには、もはや必須の機能だからです。razr foldは、1台でPC、タブレットと普段使いのスマホを兼ねる端末で、メインになるべきものだと考えています。そう判断して、入れることにしました」と語る。
グローバル版は3月のMWCで正式に発表されたが、その際には日本導入が決まっていたのか。嶋田氏は「実は完全に決まっていたわけではなく、パートナーとコミュニケーションをしていた時期になります。その後ぐらいに、出すことが決まりました。キャリアモデルはさすがに無理ですが、まずはオープンマーケットでなら出せます。ただ、あまりに遅くなると他社が来てしまうということもあるので、このタイミングになりました」と話す。
そのタイミングでの決定で、FeliCa搭載できたのが驚きだ。対応に時間はかからなかったのか。嶋田氏は「世に出すまでには、FeliCaのハードウェア試験とソフトウェア試験があり、どうしても最後の試験のところに時間がかかってしまいます。ただ、今回はどうしてもこのタイミングで出したかった。『そこを何とか』と頼み込んで、かなり早くやっていただけることになりました」と明かす。
インパクトを出すためにIIJで10万円割引を実施している。部材高騰で価格は約30万円と高価だが、IIJmioが10万円割引などの強力な施策を展開して対抗する。



