米テキサス大学ヘルスサイエンスセンター・サンアントニオ校と米メソジスト病院の研究者らが、メタボリックシンドロームが脳の老廃物排出ルートを塞ぎ、認知症などの初期症状である嗅覚障害を引き起こすとする仮説を提唱した。この内容は国際学術誌Frontiers in Neuroscienceに発表された総説にまとめられている。
嗅覚障害が認知症に先行する理由
アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳の病気では、記憶障害や運動障害が現れる何年も前から、においが分からなくなる嗅覚障害が先行することが多い。研究チームは、認知機能障害、睡眠障害、そして脳の老廃物を排出する機能(グリンパティック系)の低下がセットになって現れると分析している。
メタボが鼻の血管を拡張させリンパ管を圧迫
一連の症状の根本原因として研究者らが指摘するのが、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)だ。高血圧や糖尿病、肥満といった代謝異常が起きると自律神経のバランスが崩れ、鼻の奥にある鼻甲介の血管が異常に拡張して血液が滞るという。近年の研究では、睡眠中に脳内にたまったアミロイドβなどの有害な老廃物が、鼻の奥のリンパ管を通って排出されることが分かってきている(動物実験が中心の知見)。メタボによって鼻の奥の血管が腫れ上がると、脳のゴミの排水管の役割を果たすリンパ管が物理的に押しつぶされ、流れが塞がれてしまうという。
嗅覚神経周辺から有害タンパク質が蓄積
脳のゴミ捨て機能が滞ると、排泄ルートの出口に近い嗅覚神経の周辺から有害なタンパク質があふれて局所的に蓄積し始める。これが記憶力の低下よりも先に嗅覚障害が起こる理由だと説明している。処理しきれなくなったゴミの蓄積が脳全体に波及することで、最終的に認知障害などの症状へ進行するとしている。
この現象は神経変性疾患だけでなく、うつ病や外傷性脳損傷、統合失調症、自閉スペクトラム症など、様々な脳のトラブルに共通して見られるという。研究チームは、メタボリックシンドロームでは副交感神経の亢進により鼻甲介の血管が拡張・血液が滞留し、隣接するリンパ管を圧迫して、脳の老廃物を含む脳脊髄液の流れを妨げると提唱している。



