トランプ前米大統領が表明した追加関税が、半導体業界全体に大きな衝撃を与えている。韓国のサムスン電子や台湾のTSMC(台湾積体電路製造)など、世界の主要半導体メーカーの業績悪化が予想されており、日本企業への波及効果も懸念されている。
追加関税の内容と半導体業界への直接的な影響
トランプ前大統領は、全ての輸入品に10%の一律関税を課すと発表。さらに中国からの輸入品には追加で10%の関税を上乗せする方針だ。これにより、半導体製品の製造コストが上昇し、価格競争力が低下する恐れがある。特に、サムスン電子やTSMCは米国市場への輸出依存度が高く、打撃は避けられないとみられる。
サムスン電子の2023年の売上高に占める米国市場の割合は約30%に上る。同社はメモリ半導体で世界シェアトップを誇り、関税の影響で収益が圧迫される可能性が高い。一方、TSMCは米国顧客向けの売上が全体の約70%を占めており、関税によるコスト増加は同社の競争力低下につながりかねない。
日本企業への波及効果とサプライチェーンの再編
日本企業も無視できない影響を受ける可能性がある。東京エレクトロンや信越化学工業など、半導体製造装置や材料を手がける企業は、顧客であるサムスンやTSMCの投資抑制により、受注減少に直面する恐れがある。また、ルネサスエレクトロニクスなどの半導体メーカーも、部品調達コストの上昇や需要減退のリスクにさらされる。
さらに、関税導入により半導体サプライチェーンが大きく再編される可能性がある。米国政府は半導体の国内生産を促進するため、CHIPS法などを通じて補助金を提供しているが、関税が追加されれば、企業は生産拠点を米国に移すインセンティブが高まる。これにより、アジアを中心とした既存のサプライチェーンが崩れる可能性も指摘されている。
業界団体の反応と今後の見通し
半導体業界団体であるSEMIは、関税政策が業界の成長を阻害するとして懸念を表明。「関税はサプライチェーンの混乱を招き、最終的には消費者への価格転嫁につながる」と警告している。また、日本半導体産業協会も「日本の半導体関連企業も影響を免れない」と述べ、政府に対して早期の対応を求めている。
市場関係者の間では、関税の影響が半導体業界の回復基調に水を差すとの見方が広がっている。2023年後半から半導体市場は在庫調整が進み、需要回復の兆しが見え始めていたが、今回の関税措置で再び不透明感が強まった。特に、AI向け半導体需要の高まりが業界を支えてきたが、コスト増加が投資計画の見直しにつながる可能性もある。
今後の焦点は、実際の関税発動時期と対象範囲の詳細、そして各国の報復措置の動向だ。日本政府も、関税が自国の半導体産業に与える影響を注視し、必要に応じて対策を講じる方針である。



