電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、自動車業界は新たな試練に直面している。EVに搭載される半導体の数は従来のガソリン車の2倍以上に達し、その需要急増が半導体不足を深刻化させている。業界関係者によると、2025年までに世界の自動車用半導体市場は1000億ドル(約15兆円)に拡大する見通しだ。
半導体不足の背景と現状
半導体不足は2020年以降、自動車生産に大きな影響を与えてきた。特に、EVに使用されるパワー半導体やマイコン(マイクロコントローラー)の需要が高まっている。ある自動車部品メーカーの幹部は「EV1台あたりの半導体搭載数はガソリン車の約2.5倍で、今後さらに増える」と指摘する。
半導体業界では、自動車向けの生産能力増強が進んでいるが、需要の伸びに追いついていない。調査会社IHS Markitによると、2022年の自動車用半導体の需給ギャップは約15%に達し、2023年も10%前後の不足が続くと予測される。
自動車メーカーの対応策
各社は半導体の安定調達に向けて動き出している。トヨタ自動車は2023年、半導体メーカーとの直接契約を拡大し、在庫の積み増しを進めている。また、日産自動車はルネサスエレクトロニクスと協業し、車載半導体の開発を加速させる方針だ。
一方、テスラは半導体不足の影響を比較的受けにくいとされる。同社は自社開発の半導体を搭載し、サプライチェーンのリスクを分散している。あるアナリストは「テスラの垂直統合モデルは半導体不足に対して強い」と評価する。
業界全体への影響
半導体不足は自動車生産の遅延やコスト上昇を引き起こしている。日本自動車工業会の調べでは、2022年の国内自動車生産台数は前年比で約10%減少し、その要因の一つが半導体不足だった。また、半導体価格の上昇が車両価格に転嫁されるケースも出ている。
さらに、半導体不足はEVシフトのスピードにも影響を与える可能性がある。供給制約によりEVの生産が計画通りに進まなければ、各国政府が掲げる電動化目標の達成が遅れる恐れがある。
今後の見通し
半導体メーカーは増産投資を加速している。台湾のTSMCは2024年までに自動車向け半導体の生産能力を20%増強する計画だ。また、米国や欧州でも半導体工場の新設が相次いでいる。
しかし、需要の急増に供給が追いつくには時間がかかるとみられる。業界団体SEMIは、半導体不足が完全に解消されるのは2024年以降になると予測している。自動車メーカーは当面、半導体調達の多様化や在庫管理の強化を迫られることになる。



