三菱ケミカル、半導体向け「加熱すると縮む新素材」開発 AI時代の発熱問題に挑む
三菱ケミカル、半導体向け「加熱すると縮む新素材」開発

三菱ケミカルは8月27日、半導体パッケージの新素材を開発し、事業化すると発表した。2026年度中にパイロット版を提供し、2027年度下期に量産品を販売する。この発表を受けて、持ち株会社である三菱ケミカルグループの株価は大幅に反発した。

半導体パッケージと発熱問題

半導体パッケージは、ICチップを包む保護部材だ。「ICチップを保護する」「他の電子部品と接続する」「複数のICチップを1つにまとめる」といった役割がある。半導体と聞いて思い浮かべる「緑色の基盤」に載っている部品のイメージだ。

三菱ケミカルの新素材は「負膨張フィラー」と呼ばれる粉末状のもので、樹脂などに混ぜる添加材として使う。加熱すると縮む性質があるといい、同素材を半導体パッケージ材料に応用することで、AI時代に半導体が直面する「熱問題」を解決できるという。

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半導体の発熱問題というと、温度の上昇によってICチップに負荷がかかり、正常な動作ができなくなる「熱暴走」を防ぐため、冷却方法の話になりがちだ。三菱ケミカルによると、半導体を高性能化させる上で障害となる別の問題があるという。同社の新素材は、その問題をどう解消するのか。

「加熱すると縮む新素材」、半導体の高性能化にどう役立つ?

AIが普及したことで、AIの計算を支える半導体は高性能化が進んでいる。半導体メーカー各社は、複数のICチップを組み合わせる「チップレット技術」、ICチップや回路を積み重ねる「3Dスタッキング技術」などを活用して、半導体チップの高密度化に取り組んでいる。

しかし、三菱ケミカルによると「チップの高密度実装による発熱増加が問題となっている」という。一般的な物質は、加熱すると体積が膨張する性質がある。これにより、半導体パッケージに「反り」が生じてしまう。

反りを抑制するため、製造時に「フィラー」と呼ばれる充填(じゅうてん)材を加えていたが「近年はその充填量も限界に近づいている」(三菱ケミカル)という。

三菱ケミカルの新素材「M-Filleris NTE」

こうした問題に対応するため、三菱ケミカルが開発したのが負膨張フィラーだ。負膨張、つまり加熱すると体積が収縮する性質を持つ。同素材を使うことで、半導体パッケージの反りやズレを抑えられるという。

一般的なフィラーであるAl2O3(赤い線)やSiO2(緑の線)は、温度が上昇する(横軸)と、相対伸び(縦軸)が増加している。三菱ケミカルの負膨張フィラー「M-Filleris NTE」は、温度が上昇すると相対伸びが減少している(出所:三菱ケミカルのプレスリリース)

同社が長年培ってきた無機材料の設計技術を生かした。三菱ケミカルは「従来の負膨張材料で問題だった、使用温度範囲の狭さ、非球形、高比重、高吸湿性等を克服し、半導体パッケージ用途への適用を可能とした」とする。

同社は、半導体用途の例として「封止材料向け」「絶縁材料向け」「基盤材料向け」「感光性材料向け」などを挙げている。開発した負膨張フィラーは、室温〜400度の広い温度範囲で負膨張性を持ち、比重は従来の一般的な半導体向けフィラーと同等だという。

既存事業とのシナジーを出せるか

三菱ケミカルは、開発した負膨張フィラーを「M-Filleris NTE」というブランド名で展開する。「M-Fillerisシリーズ」として、他の機能性フィラーもラインアップに加える予定だ。

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既存事業である「エポキシ樹脂」とのシナジーも狙う。M-Filleris NTEは、エポキシ樹脂と混ぜた場合に「優れた熱膨張低減効果」(同社)を生むといい、フィラー単体だけでなく、エポキシ樹脂と混練(異なる材料を混ぜ合わせ練り込む作業)して提供することで、顧客の材料設計や開発期間を短縮したい考えだ。

同社は「AI・データセンター需要の拡大に伴い成長が期待される半導体材料市場において、新たなソリューションを提供する」とコメントを発表している。

三菱ケミカルグループは、2027年3月期通期で売上収益3兆8000億円、純利益1270億円を見込んでいる。同第1四半期の売上収益は1兆42億円。純利益は577億円で、前年同期比で381億円の増益だった。好調な要因として、同社の漆田CFO(最高財務責任者)は「半導体関連製品の堅調な需要」「中国情勢を背景とした顧客層での在庫確保による販売数量の増加」「ナフサ価格上昇に伴う在庫評価益」を挙げている。