SKハイニックス、20年前の経営危機から時価総額1兆ドルへ躍進した軌跡
SKハイニックス、経営危機から1兆ドル企業へ躍進

韓国のメモリー半導体メーカーSKハイニックスは、20年前の経営危機から驚異的な復活を遂げ、時価総額1兆ドル(約162兆円)を達成した。AIブームによる先端メモリー需要の急拡大が追い風となり、2025年初めから株価は約13倍に上昇。2026年7月10日には米ナスダック・グローバル・セレクト・マーケットに米国預託証券(ADR)を上場し、初日は公募価格を約13%上回る活況を呈した。

SKハイニックスの起源と経営危機

SKハイニックスの歴史は1983年、現代グループが設立した現代電子産業にさかのぼる。当初はコンピューター向けDRAMを主力製品とし、大規模投資と先端技術への積極投資により、1990年代までに世界有数のDRAMメーカーへ成長した。しかし、1997~98年のアジア通貨危機でメモリー価格が暴落し、債務が膨張。現代グループは事業再編を余儀なくされ、2001年に社名をハイニックス・セミコンダクターに変更した後、約10年間は債権団の支援に依存する状況が続いた。2002年には米マイクロン・テクノロジーへの売却が目前まで進んだが、交渉は破談となった。

転機は2012年、韓国SKグループが経営権を取得し、社名をSKハイニックスに変更したことだ。翌2013年には米AMDと共同で世界初の広帯域メモリー(HBM)を開発。複数のDRAMを垂直に積み重ねることで、消費電力を抑えながら高速データ転送を実現した。

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AIブームで企業価値が急騰

メモリー半導体は長年、パソコン需要に依存する景気循環型産業だったが、AIの台頭により構造が一変した。AIシステムの大規模化・高度化に伴い、データセンター向け先端メモリーの需要が急増し、供給不足が深刻化している。SKハイニックスが先駆けて開発したHBMは、アンソロピックの「クロード」やOpenAIの「ChatGPT」など主要AIプラットフォームの学習・推論に使われるプロセッサーに不可欠な部品となり、同社はエヌビディア向けHBMの最大供給企業となった。

市場調査会社トレンドフォースによると、SKハイニックスは世界HBM市場の推定51%を占め首位。サムスン電子が約26%、マイクロンが約23%と続く。3社はいずれも生産能力拡大に積極投資しており、競争は激化している。サムスン電子とSKハイニックスは韓国内にそれぞれ2カ所の新工場を建設し、総額800兆ウォン(約86兆円)を投資する計画。マイクロンも2035年までに米国で2500億ドルを投資する方針だ。

次世代HBM4を巡る競争

各社はAI向け最速・最高性能メモリーの開発でも競争しており、次の主戦場は最新世代のHBM4だ。HBM4はエヌビディアの次世代AIプラットフォーム「ベラ・ルービン」に採用され、次世代AIデータセンターの中核となる見通し。サムスン電子は2月に初の商用HBM4をエヌビディアへ出荷して先行したが、その後3社全てがベラ・ルービン向けHBM4の認証を取得し、生産段階へ移行している。ベラ・ルービン搭載AIシステムの出荷は2026年後半に本格化する見込みだ。

米国上場で世界の投資家に門戸

SKハイニックスは急成長を受け、ナスダックにADRを上場し、世界の投資家基盤の拡大を目指した。ADRは米国外企業の株式所有権を示す米国上場証券で、投資家は米ドル建てで米国市場を通じて外国企業株に投資できる。調達資金は新工場建設や極端紫外線(EUV)露光装置など先端製造設備の導入に充てられる。

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ADR1単位は普通株0.1株に相当し、同社は1億7790万ADRを1単位149ドルで売り出し、265億ドルを調達。これは時価総額の約2.5%に相当し、外国企業による米国上場として過去最大規模となった。ADRの初日終値はソウル市場の普通株に対して約15%のプレミアムとなった。一方、ソウルの教保生命保険のアクティブ株式運用責任者ジェイソン・ミンサン・カム氏は「米韓市場間の価格差を利用する裁定取引や短期的な利益確定売りにより、ソウル上場株は短期的に下押し圧力を受ける可能性がある」と指摘した。