電気自動車(EV)の世界的な普及加速により、車載用半導体の需要が急増している。東洋経済の最新レポートによると、2025年までに車載半導体市場は前年比20%拡大し、約600億ドル規模に達する見通しだ。しかし、供給体制が追いつかず、深刻なチップ不足が自動車メーカーの生産計画を直撃している。
需要拡大の背景:EV1台あたりの半導体搭載数が2倍に
従来のガソリン車では1台あたり約300個の半導体が使用されていたが、EVではパワートレインやバッテリー管理システム、自動運転機能の高度化により、その数は約600個に倍増する。特に、パワー半導体やセンサー、マイコン(マイクロコントローラー)の需要が顕著だ。
「EVシフトは半導体業界にとってかつてない追い風となっている」と、業界アナリストの田中氏は指摘する。実際、世界最大の半導体受託生産企業であるTSMCは、2024年の車載向け生産能力を前年比40%増強する計画を発表したが、それでも需要に追いついていない。
供給不足の現状:リードタイムが20週超え
半導体の受注から納品までのリードタイムは、2023年平均で20週を超え、通常の2倍に達している。特に、成熟プロセス(28nm以上)で製造される車載用チップの不足が深刻で、自動車メーカーは生産調整を余儀なくされている。
トヨタ自動車は2024年1月、半導体不足により国内工場の一部ラインを停止すると発表。日産自動車も同様の理由で、2024年度の生産台数目標を下方修正した。これらの動きは、部品メーカーやディーラーにも波及し、業界全体に影響を与えている。
業界の対応:サプライチェーン見直しと内製化の動き
自動車メーカーは、従来のジャストインタイム方式から、半導体の戦略的在庫確保へと方針転換を進めている。また、テスラやフォルクスワーゲンは、半導体の内製化に乗り出し、自社でチップ設計を行う動きが加速している。
「供給不足は一時的なものではなく、構造的な問題だ」と、半導体業界コンサルタントの鈴木氏は警鐘を鳴らす。同氏は、自動車メーカーが半導体メーカーとの長期契約を結ぶなど、サプライチェーンの強靭化が急務だと指摘する。
今後の展望:2025年以降も需給逼迫が続く可能性
市場調査会社の予測では、車載半導体の需給バランスが改善するのは2025年後半以降とみられる。しかし、地政学的リスクや新たな需要の高まりにより、供給制約が長期化する可能性もある。
東洋経済のレポートは、自動車業界が半導体不足に対応するためには、業界横断的な協力と政府の支援が必要だと結論づけている。特に、日本政府は半導体戦略の一環として、車載半導体の国内生産拠点の整備を促進すべきだと提言している。



