川崎重工、潜水艦技術でシェルター換気市場に参入 有事需要を開拓
川崎重工、潜水艦技術でシェルター換気市場に参入

川崎重工業が、潜水艦で培った空気浄化技術を応用し、地下シェルター向け換気装置市場に本格参入する。一般建築物向け換気装置では実績のない同社だが、有事や災害時を想定した特殊な需要を見込み、パナソニックや三菱電機が支配する業界地図に切り込もうとしている。

潜水艦の「肺」が陸上で商機に

川崎重工が狙うのは、他国の攻撃や大規模災害に備える地下シェルター向けの換気システムだ。同社は潜水艦の生命維持装置である「潜水艦の肺」とも呼ばれる空気浄化・循環技術を約半世紀にわたり開発してきた。この技術を応用すれば、外部から有害物質が侵入した場合でも、内部の空気を清浄に保ち続けることが可能となる。

大きな転換点となったのは、政府が2026年3月末に、攻撃や災害に備えるシェルター確保の基本方針を初めて閣議決定したことだ。これにより、防護性能を備えた設備市場の立ち上がりが期待され、川崎重工は商機を見出している。

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技術より難しい「市場づくり」

川崎重工の担当者は「潜水艦技術の応用は確立しているが、最大の課題は市場そのものを作り上げることだ」と語る。シェルター換気装置は、一般の空調設備と異なり、防弾・防爆性能や化学兵器に対するフィルター機能など、極めて高度な仕様が求められる。しかし、こうした製品の需要はまだ顕在化しておらず、自治体や企業への啓発活動が必要となる。

同社は、まずは防災意識の高い自治体や、重要インフラを抱える企業向けに提案を進める方針だ。政府の基本方針では、2027年度までに全国100カ所のシェルター整備目標が示されており、これが初期需要の核になるとみられる。

危機管理投資の萌芽

シェルター市場は、地政学リスクの高まりや自然災害の頻発を背景に、今後拡大が見込まれる。川崎重工は、潜水艦技術のブランド力と信頼性を武器に、高付加価値な換気システムを提供し、他社との差別化を図る。同社の試算では、シェルター換気装置の市場規模は2030年までに年間100億円超に成長する可能性があるという。

一方で、パナソニックや三菱電機といった既存大手も、防災関連製品のラインアップを強化しており、競争は激化しそうだ。川崎重工は、潜水艦技術の応用という独自の強みを生かし、ニッチ市場での優位性を確立できるかが鍵となる。

同社の挑戦は、日本の危機管理投資の新たな芽生えを示す事例として注目される。

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