年収1000万円でも不幸な人と年収400万円でも幸せな人の違いとは?
年収1000万円でも不幸な人と400万円でも幸せな人の違い

年収1000万円でも「お金が足りない」と感じる人がいる一方、年収400万円でも今の暮らしに満足している人がいます。収入が増えれば、必ず幸せになれるわけではないとしたら、その違いはどこにあるのでしょうか。お金の額だけでは決まらない「幸福」の条件について、『不安通貨 貯金や投資で消えない「お金の不安」を最新科学で解決』(櫻井かすみ/Gakken)から抜粋して紹介します。

お金があっても不幸な人/なくても幸せな人の違い

お金があっても、一人で孤独に生きていると幸福度は下がる。これは幸福研究の世界で繰り返し指摘されてきた事実です。人は「いくら持っているか」よりも「誰と、どんな関係の中で生きているか」によって、心の満たされ方が大きく左右されるといわれています。

ある資産家の話をさせてください。周囲から見れば、誰もがうらやむような経済状況でした。働き方も自由で、生活に困ることは何1つない。いわゆる「成功者」と呼ばれる方です。けれど、本人が打ち明けてくれたのはこんな言葉でした。「近づいてくる人がみんな、お金目当てに見えてしまう」。仕事の相談、会食の誘い、親しげなメッセージ。その1つひとつが純粋な好意なのか、経済的な目的があるのか、区別がつかなくなっていったそうです。

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最初は少し疑う程度だったものが、やがて疑うことが当たり前になりました。「この人はなぜ自分に近づいてくるのだろう」という問いが頭から離れなくなったといいます。その疑いはやがて、身近な大切な人にまで広がっていきました。「本当に自分のことを思ってくれているのだろうか。お金があるから一緒にいるだけなのではないか。お金がなくなったら離れていくのではないか……」。お金はあります。生活にも困りません。将来の不安も資産的には問題ありません。それでも心はいつも孤独でした。人との信頼関係が薄れ、安心して誰かと笑い合うという、ごく当たり前の幸せが少しずつ消えていったのです。これは本当に豊かな状態といえるのでしょうか。

一方で、決して裕福とはいえなくても、家族や友人との温かい関係の中で生きている人は、お金の不安が多少あっても心の満足度が高いことは珍しくありません。将来に不安がまったくないわけではない。でも話を聞いてくれる人がいる。一緒に笑える人がいる。困ったときに頼れる人がいる。このつながりがあるだけで、人の心は驚くほど穏やかになるものです。

お金があっても不幸な人と、お金がなくても幸せを感じられる人。その違いは金額ではありません。お金の先に何があるかに、決定的な差があります。お金は人生を支える大切な道具。でもお金だけで人との信頼関係も、安心感も、笑い合える時間も買うことはできません。大切なのは、お金が「どんな人との関係」や「どんな時間」に変わっているかです。同じ金額でも、人との時間に変わるお金と、ただ不安を埋めるためだけに使われるお金とでは、心に残るものはまったく違います。お金の額ではなく、お金の「行き先」が、幸福と不幸を分けているのです。

年収400万円でも幸せな人、1000万円以上でも不幸な人

「年収が上がれば、人は幸せになれるのか?」多くの人が一度は考える問いではないでしょうか。実際、収入が増えるほど安心できそうに思えますし、「もっと稼げば不安はなくなる」と感じる方も少なくありません。確かに、パーソル総合研究所×慶應義塾大学前野隆司研究室「はたらく人の幸せに関する調査」では、年収が高い人ほど"幸せ実感"が高まる傾向が示されています。一見すると、「やはりお金が多いほど幸せなのでは?」と思えるかもしれません。

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しかし同じ調査では、興味深い結果も示されています。それは、年収が1000万円を超えても"不幸せ実感"はゼロにならず、一定水準で下げ止まるということです。つまり、お金は幸せに関係する大切な要素ではあるものの、それだけで不安や不満が消えるわけではないのです。

また、ある比較事例では、「年収400万円でも幸せな人」と「年収1000万円でも不幸な人」を比べた際、印象的な違いが語られていました。年収1000万円でも不幸を感じている人は「お金が足りない」「もっとお金が欲しい」と感じ、信頼できる人間関係が少ない傾向があった一方で、年収400万円でも幸せを感じている人は、「これだけもらえてありがたい」「今の生活に感謝している」と、日々の暮らしや人とのつながりに満足していたといいます。ここで見えてくるのは、幸せを決めるのは"いくら持っているか"だけではなく、"どこに価値を置いているか"でもあるということです(※参考:『年収が増えれば増えるほど、幸せになれますか?:お金と幸せの話』前野隆司/河出書房新社)。

さらにパーソル総合研究所の調査では、幸福度を構成する要素として、次の前野隆司先生の「幸せの4つの因子」が活用されています。【「やってみよう(自己実現と成長)」「ありがとう(つながりと感謝)」「なんとかなる(前向きと楽観)」「ありのままに(独立と自分らしさ)」】ここから見えてくるのは、幸せを決めるのは「いくら持っているか」だけではなく「どんな状態で生きているか」ということです。どれだけ収入が増えても、自分らしさを失っていたら。信頼できる人とのつながりがなかったら。未来に希望を持てなかったら。お金だけで幸福が完成するわけではありません。

幸福は収入だけで決まらない

幸福は収入だけではなく、人とのつながりや感謝、前向きさ、成長実感といった複数の要素が重なって形づくられていきます。つまり、お金は幸せの一部を支える大切な要素ではあっても、幸せそのものを単独で決めるものではないということを、感じていただけるのではないでしょうか。

これは、私が提唱する「不安通貨」と「幸せ通貨」の違いにも重なります。不安通貨は、「もっと収入があれば安心できる」という前提で動きます。しかしこの考え方では、収入が増えても基準が上がり続け、「まだ足りない」が終わりません。一方、幸せ通貨は"自分にとって満たされる状態は何か"を基準にします。だからこそ、お金の額だけでなく、誰と過ごしているか、どんな時間を使えているか、自分らしく選べているか、といった要素も含めて、幸福が形づくられていくのです。

改めて、お金は、人生を支える大切な道具です。でも、お金そのものが幸せの土台をすべて担えるわけではありません。だからこそ、問い直したいのです。「自分にとっての幸せは、どこにあるのか?」「そのために、お金をどう使いたいのか?」この問いに自分の言葉で答えられるようになったとき、お金はただの数字ではなく、人生を支える"幸せ通貨"へと変わっていくのだと思います。

『不安通貨 貯金や投資で消えない「お金の不安」を最新科学で解決』(櫻井かすみ/Gakken)は、なぜお金が増えても不安は消えないのかを、ファイナンシャル・ウェルビーイングを中心に幸福学、心理学、行動経済学、経済学の研究成果をもとに科学的に解き明かす一冊です。なぜ不安はなくならないのか、お金と幸せはどのように関係しているのか、どうすればお金に振り回されずに生きられるのか…、本書を通じて解決へと導きます。