トヨタ自動車は2024年に水素を直接燃焼させるエンジン車の量産を開始する方針を固めた。燃料電池車(FCV)が抱える高コストや水素ステーションの整備遅れといった課題を克服する狙いだ。既にカローラスポーツをベースにした水素エンジン試作車を開発し、耐久試験を進めている。
水素エンジン車の仕組みと利点
水素エンジン車は、従来のガソリンエンジンを改造し、燃料を水素に置き換えたもの。燃焼時にCO2を排出しないため、カーボンニュートラルな選択肢として注目される。FCVと異なり、燃料電池やモーターを必要とせず、既存のエンジン技術や部品を活用できるため、車両コストを大幅に低減できる。
トヨタは2021年の富士24時間耐久レースに水素エンジンのカローラスポーツを投入。2022年には同車で公道走行試験を開始し、2023年には量産化に向けた技術検証を加速している。トヨタの豊田章男社長(当時)は「水素エンジンはカーボンニュートラルへの現実的な解の一つ」と述べている。
FCVの課題を克服する戦略
トヨタはFCVの先駆者として2014年に「MIRAI」を発売したが、普及は進んでいない。その理由として、車両価格が700万円以上と高額なこと、水素ステーションが全国で約160カ所と少ないことが挙げられる。水素エンジン車はFCVに比べてシステムが簡素で、既存のエンジン製造ラインを転用できるため、コストを約3分の1に抑えられる可能性がある。
また、水素エンジンは燃料供給圧力が低くても動作するため、既存の水素ステーションだけでなく、将来的には家庭用の水素供給装置も利用できる可能性がある。トヨタはこの柔軟性を武器に、FCVとは異なる市場セグメントでの普及を目指す。
量産化への課題と展望
水素エンジン車の量産には、水素の安定供給とコスト低減が不可欠だ。現在、水素の多くは天然ガスから製造されており、製造時にCO2を排出する。トヨタは再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の普及が進めば、真のカーボンニュートラルが実現できるとしている。
さらに、水素エンジンは燃焼時に微量の窒素酸化物(NOx)を排出するため、排出ガス処理技術の改良が必要だ。トヨタは既存の三元触媒技術を応用し、NOx排出量をガソリンエンジン並みに抑える技術を開発中とされる。
トヨタは2024年の量産開始後、まず商用車や業務用車両に投入し、その後一般乗用車にも展開する計画だ。水素エンジン車がFCVとともに、水素社会の実現に向けた重要な選択肢となることが期待される。



