タイ自動車産業の変革、EVシフトで日本勢の競争力低下が鮮明に
タイ自動車産業変革、EVシフトで日本勢競争力低下

タイの自動車産業が電気自動車(EV)シフトによる変革期を迎え、これまで圧倒的なシェアを誇ってきた日本メーカーの競争力低下が鮮明になっている。2023年のタイ国内の自動車生産台数は184万台と前年比で減少し、特にエンジン車の需要減退が響いている。一方、EV市場では中国勢が急速にシェアを拡大しており、日系企業の戦略見直しが急務となっている。

生産台数の減少とEVシフトの加速

タイ工業連盟(FTI)のデータによると、2023年の自動車生産台数は184万台で、前年の188万台から減少した。うち乗用車は約100万台、商用車は約84万台。特に、ピックアップトラックを中心とする商用車の生産が落ち込んだ。FTIの自動車産業部門のスラポン会長は「内需の低迷と輸出の伸び悩みが生産に影響している」と指摘する。

タイ政府は「30@30政策」を掲げ、2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を設定。これにより、EV関連の投資促進策が加速している。中国の長城汽車(GWM)や比亜迪(BYD)などはタイに工場を建設し、現地生産を本格化させている。2023年のEV販売台数は約7万6000台で、前年の約1万台から急増。市場シェアは約12%に達した。

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日本メーカーの苦戦と中国勢の攻勢

タイ市場で長年トップシェアを誇ってきたトヨタ自動車は、2023年の販売台数が約34万台と前年比で減少。同社はハイブリッド車(HV)に注力しているが、EVへの対応の遅れが目立つ。ホンダやいすゞも同様に苦戦しており、日系メーカー全体のシェアは約78%と依然高いものの、EV市場では中国勢に大きく水を開けられている。

中国のBYDは2023年にタイで約3万台のEVを販売し、EV市場でトップシェアを獲得。同社は2024年からタイ国内でEVの生産を開始する計画で、さらなるシェア拡大が見込まれる。長城汽車も昨年、タイでEVの生産を開始し、2024年には年間約8万台の生産能力を持つ工場を稼働させる予定だ。スラポン氏は「中国メーカーの積極的な投資がタイ市場を活性化させている」と評価する。

日系企業の戦略転換と今後の展望

こうした状況を受け、日系企業もEV戦略の見直しを迫られている。トヨタは2024年にタイでEVの生産を開始する計画を発表。また、ホンダも2024年内にタイでEVの生産を始める方針だ。ただ、中国勢に比べると投入モデルや価格競争力で劣っており、巻き返しには時間がかかるとみられる。

タイ政府はEV生産を促進するため、補助金や関税優遇措置を導入。2023年には新たに14社のEV関連企業が投資許可を得た。これにより、タイは東南アジア最大のEV生産拠点を目指している。一方で、自動車部品サプライヤーへの影響も懸念されており、特にエンジン関連部品を中心とする中小企業は事業転換を迫られている。

サプライチェーンへの影響と地域経済

タイの自動車産業は約70万人の雇用を支え、GDPの約10%を占める基幹産業だ。EVシフトにより、エンジンやトランスミッションなどの部品需要が減少し、これらを生産するサプライヤーの経営が圧迫されている。タイ自動車部品工業会(TAPMA)の幹部は「部品メーカーはEV向けの新たな技術開発や事業多角化が必要だ」と述べている。

また、日本からの部品輸出にも影響が出始めている。2023年の日本からタイへの自動車部品輸出額は前年比で減少し、特にエンジン部品の落ち込みが顕著だった。一方で、中国からのEV関連部品の輸入は増加しており、サプライチェーンの再編が進んでいる。

タイの自動車産業の変革は、日本メーカーにとって大きな試練となっている。EVシフトへの対応が遅れれば、タイ市場だけでなく、東南アジア全体での競争力低下につながる可能性がある。日系企業の今後の戦略が注目される。

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